今回は,わが国の障害者福祉の歴史を取り上げます。
わが国の障害者福祉の始まりは,1949(昭和24)年の身体障害者福祉法だと言えるでしょう。
それ以前は,救貧制度の対象でした。
障害者の入所施設の始まりは,1960(昭和35)年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)です。
その後,1960年代に重度障害児・者の入所施設ができていきます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題58 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。
2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。
3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。
4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。
5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
勉強不足の人は,勘で正解できるような問題ではありません。
勉強している人も正解はそんなに簡単ではないでしょう。
なぜなら,正解はびっくりのものだからです。
1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。
身体障害者更生援護施設という聞いたことのないものが出題されています。
聞いたことがないのは,当然だと言えるかもしれません。
なぜなら,現在は,「身体障害者社会参加支援施設」と名称が変わっているからです。
1950年当時,身体障害者更生援護施設として,以下の施設が規定されました。
①身体障害者更生指導施設
②中途失明者更生施設
③身体障害者収容授産施設
④義肢装具製作施設
⑤点字図書館
⑥点字出版施設
これらは覚える必要はありません。
このあと,1951年に社会福祉法人ができたことで,民間の身体障害者更生援護施設が設立されていくことになります。
それではほかの選択肢も見てみましょう。
2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。
スペシャルオリンピックスが法制化されているなら,もっと有名なはずです。
必ず勉強の過程で出てきたはずです。
しかし,そうではありません。
なぜなら,法制化されていないからです。
3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。
社会福祉基礎構造改革は,1990年代に行われたものです。
大規模コロニーは,1960年代から始まり,「社会福祉施設整備緊急5カ年計画」(1971~1950年)で広がっていきます。
4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。
障害者基本法には,難病等は今でも入っていません。
なぜなら,障害者基本法は,施策の方向性を定めるものなので,サービスを規定するものではないからです。
障害者総合支援法で難病等が含まれた理由は,難病患者は,制度のはざまにあり,障害福祉制度を利用するのは困難だったためです。
5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。
障害児は今も対象には含まれません。
重度訪問介護の対象に加わったのは,重度の知的障害者と精神障害者です。