わが国の社会保険制度は,5つあります。
そのうち,年金保険と医療保険は,戦前にできた制度をうまく取り入れて国民皆保険・皆年金を実現しています。
そのせいで,制度が複雑です。
それに比べると,戦後にできた労働保険と呼ばれる「労働者災害補償保険(労災保険)」と「雇用保険」は,制度がシンプルです。
「社会保障」の科目が苦手だと思う人は多いと思いますが,労災保険と雇用保険は,しっかり押さえることをおすすめします。どちらかが出題されます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題54 労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 個人タクシーを営業している者は,労災保険に加入することができない。
2 労働者が,通常利用する経路で保育所に子どもを預け,会社に向かう途中で事故にあった場合,保険給付の対象にならない。
3 保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。
4 厚生年金保険の障害厚生年金が支給される場合,労災保険の障害補償年金は支給されない。
5 労災保険率は,厚生労働大臣が業種ごとに定める。
正解は,選択肢5です。
5 労災保険率は,厚生労働大臣が業種ごとに定める。
ただし,メリット制と呼ばれる保険料率を災害の発生率によって上下するので,同じ業種であっても,異なります。
それでは,ほかの選択肢を確認します。
1 個人タクシーを営業している者は,労災保険に加入することができない。
個人タクシーを営業する者でも,「特別加入制度」があるので,加入することができます。
2 労働者が,通常利用する経路で保育所に子どもを預け,会社に向かう途中で事故にあった場合,保険給付の対象にならない。
通常利用する経路で保育所に子どもを預けるのは,合理的理由だと考えられます。
現在は,通勤災害の適用は広くなり,単身赴任先に向かう途中で事故にあった場合も適用されます。
3 保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。
労災保険の保険料は,事業主のみが負担します。
労働者は負担しません。
4 厚生年金保険の障害厚生年金が支給される場合,労災保険の障害補償年金は支給されない。
厚生年金と労災保険では,厚生年金が優先されます。
そのため,障害厚生年金が満額支給され,障害補償年金は,減額して支給されます。