「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,旧カリキュラム時代は,「公的扶助論」という科目でした。
科目名は変わっても,内容はほとんど変わっていません。
古い過去問題集を購入しても,そのまま使えるような問題も多いのがこの科目の特徴と言えるかもしれません。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題64 生活保護法が規定する基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。
2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。
3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。
4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。
5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。
この科目が苦手な人は,おそらく生活保護の原理・原則を覚えるのが面倒なのだと思います。
この問題には,原理・原則の名前が出題されていませんが,それらを含んで出題されるのと,難易度がぐーっと上がるでしょう。
しかし,かなり高い確率で出題されているので,覚えるのが面倒だと思うことなく,きっちり押さえていくようにしたいです。
さて,この問題の正解は,選択肢2です。
2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。
これは,「必要即応性の原則」を述べたものです。
ただし,注意しなければならないのは,現在では,生活扶助の基準生活費の第一類には,男女差がなくなっていることです。
第一類は,個人単位で消費する経費に関して給付するもので年齢別に分かれていますが,男女の体格差が小さくなっていることを反映して,男女の給付金額は同額となっています。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。
「及び地方公共団体の条例」が余計です。保護は国家責任で実施されます。
3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。
保護を行うのは,国です。国家責任は,生活保護の原理の一つです。
4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。
一見すると正しそうに見えますが,大きな間違いがあります。
<基準及び程度の原則>
生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえないものでなければならない。
生活保護は国家による最低限の生活保障ですから,基準を上回っても下回っても不適切なものとなります。
5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。
保護は,困窮に陥った理由にかかわらず,困窮の事実に基づいて実施されます。
「無差別平等の原理」は保護の重要ポイントです。
国試では,「無差別平等の原理があっても,〇〇の場合は保護しない」といった出題がありますが,それらはすべて間違いです。保護しない場合があれば,それは無差別平等ではありません。