国家試験では,さまざまなスタイルの問題が出題されます。
事例問題の近年の定番は「この段階における」「この場面における」「この時点」などといった状況を設定した出題です。
対応そのものは不適切でなくても,「この段階」では適切ではないという問題です。
「この段階における」がいつから出題されているのかと思って調べたら,第24回が初めてでした。(この場面は第28回が初めて)
それ以前は一度も出題されていません。
それでは今日の問題です。
第30回・問題105 事例を読んで,この段階における社会福祉協議会のH社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
P町の社会福祉協議会のH社会福祉士は,J民生委員からKさん世帯の相談を受けた。Kさん(70歳,女性)は,一人息子(45歳)との二人暮らしである。息子は20代に統合失調症を発症し,その後,精神科に入退院を繰り返していた。1年前に退院し,定期的に通院していたが,このところ通院が不定期になっている。最近,J民生委員はKさんから,「息子が暴力まではいかないが,暴言を吐くことがある」と聞き,Kさん世帯を心配するようになった。
1 P町の保健師と家庭を訪問し,息子の病状と世帯の生活状態を把握する。
2 息子に社会生活技能訓練(SST)を受けさせるための手続を行う。
3 息子の主治医に連絡し,措置入院の手続を行う。
4 息子の自立を当面の目標にして,就労支援サービスに結び付ける。
5 Kさん一家の家計状況について,地域住民から情報収集を行う。
この問題の「この段階」は,初回面接の前です。
この段階で真っ先に行うべきものは,「状況確認」です。
1 P町の保健師と家庭を訪問し,息子の病状と世帯の生活状態を把握する。
これしかあり得ません。
〈おまけ〉
赤字が正解です。
「この段階において」が初めて登場した問題
第24回・問題93 事例を読んで,Aさんの発言に対するG相談員(社会福祉士)のこの段階における対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事例〕
R総合病院の相談室に,妻(51歳)と息子(17歳)の三人で暮らしているAさん(56歳)が,妻の主治医から紹介されて来所した。Aさんは,妻がこのたび若年性認知症と診断され,初めて相談室を訪れた。G相談員が面接を開始するとAさんは,「妻の調子がおかしくなって家族の生活が一変した。妻は家事もまともにできなくなり,私が仕事から帰ってきても部屋は散らかっているし,食事の準備もできていない。私も疲れているのでつい怒鳴ってしまう。このたび若年性認知症と診断され,これから通院を続ける必要もあるが,息子の受験も近いので困っている。どうしたらいいか」と話した。
1 妻を入院させることを提案して,専門病院への入院手続を進める。
2 Aさんの怒鳴るという行為をたしなめ,妻の気持ちに寄り添うよう指示する。
3 息子のことを大切にするように伝えて,息子の受験を優先するように提案する。
4 妻への介護が十分にできるように,Aさんに就労のあり方を見直すように勧める。
5 具体的なサービスに関する情報提供を行い,継続しての面接をAさんに提案する。