ストレングスとは,強みと訳されるものです。
クライエントのもつ強みを見出してアプローチします。
ストレングス視点に基づいた事例で完成度が高いと思う問題があります。
第26回・問題98 事例を読んで,病院の医療福祉相談室に勤めるC医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のストレングス視点に基づく対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Dさん(30歳,男性)は,パートナーとの性交渉によって体調に異変を感じながらも悪い検査結果が出るのを恐れ,医療機関を受診していなかった。しかし気になっていたため,悩みを打ち明けた友人に強く勧められて半年を過ぎてようやく受診に至った。その結果,HIV感染症と診断され,初めて医療福祉相談室に紹介されてきた。Dさんは「この歳でアルバイトだけで一人暮らしをしている。実家の両親には話していない。自分はダメな人間だ」と自分を強く卑下する心情を吐露した。C医療ソーシャルワーカーは,その深刻な気持ちを受け止めて対応した。
1 「この病気になったのはとても大変なことですよね」と言う。
2 「親身になって受診を勧めてくれる友人がいるではないですか」と言う。
3 「エイズ発症後の入院に備えて,両親に早く知らせた方が良いですよ」と言う。
4 「HIVに感染してもエイズを発症するとは限らないので安心してください」と言う。
5 「こうして受診にこぎ着けられたのは大きな一歩だと思いますよ」と言う。
正解は,選択肢2と5です。
ストレングスは,クライエントの内部にも外部にも見出すことができます。
選択肢2
2 「親身になって受診を勧めてくれる友人がいるではないですか」と言う。
これはクライエントの外部にあるストレングスです。
選択肢5
5 「こうして受診にこぎ着けられたのは大きな一歩だと思いますよ」と言う。
これはクライエントの内部にあるストレングスです。
いずれもクライエントがもつストレングスに気づきを与えています。
さて,これをもとにして,今日の問題です。
第30回・問題110 事例を読んで,C相談支援専門員(社会福祉士)によるストレングス視点に基づいた対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
X指定特定相談支援事業所のC相談支援専門員は,軽度の知的障害があるDさん(18歳)の,特別支援学校高等部卒業後のサービス利用に関する会議を開催することとなった。会議では,Dさん自身からサービス利用について話をしたいとの希望があったので,発言の機会を持つことにしていた。しかし,直前になって,「みんなの前に出るのが不安なので,発言できるか分からない」と言った。
1 サービス実施には専門職の意見が重要視されるので,Dさんが発言をやめても差し支えないと伝える。
2 C相談支援専門員がDさんの思いを代わりに伝えるので,発言しなくても良いと説明する。
3 発言すると自分が決めた以上は,最後まで責任を持ってやり遂げるように指導する。
4 自分から発言しようとしたことを尊重し,会議で発言する内容や方法を一緒に考える。
5 代わりに家族に発言してもらった方が良いと提案する。
この問題は,第26回の問題に比べると少し質が落ちます。
なぜなら,ストレングス視点に基づいて考えなくても,正解が出せるからです。
こういったところが第30回国試の合格基準点が過去最高の99点になった要因の一つでしょう。
合格基準点がどうなっても,確実な知識をもつ人は合格基準点を越えます。
第30回国試問題の正解は,選択肢4です。
4 自分から発言しようとしたことを尊重し,会議で発言する内容や方法を一緒に考える。
★自分から発言しようとしたこと
この部分がクライエントの内部にあるストレングスです。
★会議で発言する内容や方法を一緒に考える
この部分がクライエントの外部にあるストレングスです。
ワーカー自身もストレングスです。そんなワーカーになりたいものですね。