2021年7月10日土曜日

ソーシャルワークにおけるシステム理論

人と環境を一体のものととらえるのが,システム理論です。


システムは,仕組みの意味ではありません。


人と環境には交互作用があり,その接点に働きかけるのがシステム理論に基づくソーシャルワークです。


ここでいう交互作用とは,


人は一人で存在しているものではなく,環境から影響を受けて,そして環境に影響を与えながら絶えず変化すること。


という意味です。


システム理論は現代のソーシャルワークでは極めて重要です。


難しいと思って思考を止めることなく,理解するようにしましょう。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題98 ソーシャルワーク実践における人と環境の関わりに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 クライエント自身が捉える環境の意味を把握する。

2 環境要因に対するクライエント自身の他罰的な考え方を強化することを目的に支援する。

3 クライエントが抱えている問題の原因となっている環境要因を排除することで,問題解決を試みる。

4 クライエントを,環境から一方的に影響を受ける存在とみなして,支援を行う。

5 クライエントが問題を抱えた原因を,クライエントの性格に求める。


難解な用語が含まれているので,いやだなぁと思う人もいるかもしれません。

しかし,落ち着いて考えると答えは見えてきます。


システム理論に関連するのは,一つしかありません。


それでは解説です。


1 クライエント自身が捉える環境の意味を把握する。


これが正解です。


人は一人で生きているのではなく,環境と交互作用を行っています。


システム理論では,クライエントを取り巻く環境に目を向けることが欠かせません。


2 環境要因に対するクライエント自身の他罰的な考え方を強化することを目的に支援する。


他罰的とはなんだと思う人もいるかもしれませんが,言葉通り,自分以外に文句があることです。

交互作用を行っているわけですから,自分も環境に影響を与えています。


心の健康のために,たまにはそんなスケープゴート的なことも必要なのかもしれませんが,システム理論とは相反するものです。


3 クライエントが抱えている問題の原因となっている環境要因を排除することで,問題解決を試みる。


人と環境は交互作用を行っています。環境に目を向けて,そこから問題解決を図るのがシステム理論です。


環境要因を排除するのではシステム理論にはなりません。


4 クライエントを,環境から一方的に影響を受ける存在とみなして,支援を行う。


人と環境は交互作用を行っているので,クライエントは一方的に影響を受けるのではなく,クライエントも環境に影響を与えています。


5 クライエントが問題を抱えた原因を,クライエントの性格に求める。


システム理論では,人と環境は,問題が円環的につながっていると考えます。

つまり,どこが出発点かわからないということです。


もしすかるとクライエントの性格が問題の出発点だったかもしれませんし,環境から影響を受けて性格に問題が生じたのかもしれません。


システム理論では何が要因かということは重要視されません。

それよりも環境を理解しながら,クライエントの問題を解決することに主眼が置かれます。


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