2018年6月11日月曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~各分野の制度を整理する

「福祉行財政と福祉計画は横断的」と表現されることが多い科目です。
その意味は,分野による縦割りの出題ではなく,各分野を並べた出題がされるからです。

そのため,各制度の性質などを押さえておくことが得点力を上げます。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題43 保険料及び利用料に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護老人福祉施設のサービスのうち,食費,居住費その他日常生活に要する費用については,利用者の自己負担となっている。
2 介護保険の第2号被保険者の保険料は,年金保険者を通じて徴収されることになっている。
3 生活保護受給者のうち,65歳以上の者が介護保険の給付を受けたときの1割自己負担分は,生活扶助として支給される。
4 「障害者総合支援法」では,利用料の1割を利用者が負担する応益負担を原則としている。
5 保育料は,保護者の前年度の所得税額によって決定され,児童の年齢によって差が出ることはない。

パッと見て,知識なしでも,選択肢5は正解ではなさそうだと思えるのではないでしょうか。

その感覚は,覚えておいてください。

勉強を進めるうちに,こういったものでも引っ掛けられてしまうからです。

この問題で出題されている分野は

高齢者(2問)
低所得者
障害者
児童・家庭

の4つです。

問題としては,5つの領域ではなく,4つの領域になっていないところに不完全さを感じる問題です。

5つの選択肢があった場合,5つがばらばらになっているのが,完成度の高い問題です。

分野で言えば,地域福祉と更生保護がありますが,この問題にはそぐわないので,高齢者が2つになったと思います。

国試問題は,実はこんなところにほころびを生じることがあります。

もともと4つしかないものを出題しようと思ったら,1つを何かで埋めなければなりません。

足した一つだけ論調が違っていたりします。

この問題では,高齢者を2つにしているところに出題者の意図を感じます。

高齢者分野で仕事をしている人にとっては,ぜんぜん難しい問題ではないと思いますが,答えが分からず,お手上げ状態になりそうなときは,ぜひこんな角度から問題を眺めてみましょう。

このように2つ同じものが重なって出題して時は,どちらかに正解を隠していることが多いです。

さて,解説です。


1 介護老人福祉施設のサービスのうち,食費,居住費その他日常生活に要する費用については,利用者の自己負担となっている。

介護保険制度が始まった当時,いわゆるホテルコストは,施設サービスに含まれていました。そのため居宅では全額自己負担になるものが,施設入所すると保険料負担があるので1割負担で済みました。

そのアンバランスさを修正することで,現在は,ホテルコストは自己負担となっています。よって正解です。


2 介護保険の第2号被保険者の保険料は,年金保険者を通じて徴収されることになっている。

第2号被保険者は,医療保険の被保険者です。そのため,保険料は医療保険の保険者が徴収しています。


3 生活保護受給者のうち,65歳以上の者が介護保険の給付を受けたときの1割自己負担分は,生活扶助として支給される。

生活保護受給者は,介護保険の第2号被保険者ではないので,保険料の支払いはありません。

65歳以上になると,生活保護受給者も,第1号被保険者となります。そのため,保険料の支払いが生じます。その時は,生活扶助に介護保険料分を加算して支給します。よって間違いです。

介護保険サービスを受けたときの1割の自己負担分が介護扶助として支給されます。


4 「障害者総合支援法」では,利用料の1割を利用者が負担する応益負担を原則としている。

障害者総合支援法は,障害者自立支援法を改正したものです。

障害者自立支援法では,応益負担を原則としていました。しかし,介護保険と違って応益負担には無理がありました。

なぜなら,障害者の中には,老齢基礎年金だけで生活している人も多くいます。障害等級1級でも年額100万円はありません。そこで途中から応能負担を導入し,総合支援法で応能負担を原則としたのです。

よって間違いです。


5 保育料は,保護者の前年度の所得税額によって決定され,児童の年齢によって差が出ることはない。

これは,制度を知らなくてもすぐ×をつけられるでしょう。

差が出ることはない,というところから「差が出ることがある」ということが想像できるからです。もちろんその通りです。

よって間違いです。

最新の記事

ノーマライゼーションの国家試験問題

 今回は,ノーマライゼーションに取り組みます。 前説なしで,今日の問題です。 第26回・問題93 ノーマライゼーションの理念に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 1 すべての人間とすべての国とが達成すべき共通の基準を宣言した世界人権宣言の理念として採用された。 2...

過去一週間でよく読まれている記事