2018年6月13日水曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~利用方法の整理

2000年の社会福祉法によって,福祉の利用方法はそれまでの措置から契約制度へ転換するようになりました。

措置制度は,行政処分により,サービス利用するものです。

契約制度だけではなく,措置制度も残っています。

それでは今日の問題です。

第27回・問題45 措置制度などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 措置制度では,措置権者とサービス利用者の間の委託契約に基づいてサービスが提供される。

2 措置制度では,措置権者からサービス利用者に対して支払われる措置費をサービス提供事業者が代理受領する。

3 措置制度が適用される福祉サービスの費用は,全額国の負担とされている。

4 利用契約方式をとる制度の下でも,やむを得ない事由がある場合には,措置制度が適用される。

5 生活保護法では,行政庁が保護の必要な者に対して職権で保護を行うという職権保護が原則である。

いかにも「福祉行財政と福祉計画」という感じの問題です。

しかし,決して難しくありません。

それでは解説です。


1 措置制度では,措置権者とサービス利用者の間の委託契約に基づいてサービスが提供される。

措置制度は,措置権者の行政処分によってサービス利用するものです。

措置権者は,サービス提供事業者に委託します。

委託されたサービス提供事業者は福祉サービスを提供します。

よって間違いです。


2 措置制度では,措置権者からサービス利用者に対して支払われる措置費をサービス提供事業者が代理受領する。

代理受領は,社会保険などに採用される方式です。サービス提供事業者は保険料分を保険者から受け取ります。

代理受領に対して,償還払いという方式もあります。

償還払いは・・・

利用者は利用料を全額支払い,その後保険料分を受け取ります。フランスの医療保険は,償還払い方式を採用しています。

後から戻ってくるといっても,先に利用料を全額支払わなければならないので,サービス利用が抑制されます。

さて,措置制度です。

措置権者は,サービス提供事業者に委託料を支払います。よって間違いです。


3 措置制度が適用される福祉サービスの費用は,全額国の負担とされている。

福祉は自治事務です。全額国の負担ではなく,地方公共団体も負担します。よって間違いです。


4 利用契約方式をとる制度の下でも,やむを得ない事由がある場合には,措置制度が適用される。

例えば,特別養護老人ホームは,老人福祉法の措置制度,介護保険の契約制度の両方があります。
よって正解です。


5 生活保護法では,行政庁が保護の必要な者に対して職権で保護を行うという職権保護が原則である。

現・生活保護法でも職権保護は残っていますが,原則は申請主義です。よって間違いです。
職権保護をとっていたのは,恤救規則,救護法,旧・生活保護法です。

<おまけ~保育所方式>

福祉サービスの利用方式には,もう一つ「保育所方式」と呼ばれるものがあります。

保育所方式は,利用者はサービス提供事業者と直接契約はせず,利用者は利用を希望する施設を選択したうえで,行政に申込みます。

契約は行政と行います。



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