2018年6月14日木曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~地方公共団体の事務の整理

今回は,地方自治法による地方公共団体の事務を整理しましょう。

地方公共団体の事務は2つ

自治事務 
地方公共団体が行う事務全般。福祉・教育など。法定受託事務を除いたもの。

法定受託事務
医療法人,社会福祉法人の認可や生活保護法の保護事務など。

たった2種類です。

法定受託事務は2つに分かれます。

第一号法定受託事務 → 本来は国が行う事務。

第二号法定受託事務 → 本来は都道府県が行う事務。

以前は法定受託事務は,委任事務と呼ばれていました。

委任と受託の違いは,受託は,地方公共団体が主体,委任は国が主体です。
中央集権から地方分権に移行する流れの一つです。

参考書には,団体委任事務,機関委任事務がどのように今の形になったのか,という経緯が書かれていますが,そこに関しては出題されたことは今まで一度もありません。

覚えるべきなのは,現在は自治事務と法定受託事務の2つのみということになります。

ところで,生活保護法の目的には2つあります。

最低限度の生活保障と自立の助長です。

最低限度の生活保障は法定受託事務です。
自立の助長は自治事務です。

ここで分かるのは,全国一律の基準で実施されるのは,法定受託事務だということです。

介護保険の介護認定は全国一律です。しかし介護保険などの福祉は自治事務です。なぜそれにもかかわらず自治事務なのは,現在の総合事業でも分かるように,地方公共団体が自分たちで考えて,運用できる部分があるからです。障害者総合支援法も同様です。

それでは,今日の問題です。

第24回・問題42 法定受託事務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 地方自治法において,法定受託事務は,自治事務,団体委任事務と並んで,地方公共団体が処理する事務の一つとされている。

2 地方自治法において,法定受託事務に関して市町村長が行った行政処分に不服のある者は,他の法律に特別の定めがある場合を除いて,都道府県知事に対して行政不服審査法による審査請求をすることができるとされている。

3 介護保険法に基づいて市町村が介護保険を行うことは,市町村の第一号法定受託事務である。

4 第二号法定受託事務に関して,市町村は条例を制定することができず,都道府県知事が必要な規則を定めることになっている。

5 必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,かつての機関委任事務と異なり,法定受託事務制度では認められないものとされている。

勉強しなければ,まったく分からない問題です。

このような問題が解けるか解けないか,がトータルすると大きな差になっていきます。

勉強が足りない人が解ける試験であってはなりません。

そういった意味では,この問題は理想的に思えます。

受験する人は大変だと思いますが,だからこそ価値のある資格になります。

それでは解説です。


1 地方自治法において,法定受託事務は,自治事務,団体委任事務と並んで,地方公共団体が処理する事務の一つとされている。

参考書のごちゃごちゃした説明で混乱していると引っ掛けられます。

地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務の2つです。

よって間違いです。

機関委任事務,団体委任事務などは過去のものです。

シンプルに

地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務の2つ

と覚えましょう。


2 地方自治法において,法定受託事務に関して市町村長が行った行政処分に不服のある者は,他の法律に特別の定めがある場合を除いて,都道府県知事に対して行政不服審査法による審査請求をすることができるとされている。

この問題はごちゃごちゃしたもので,難易度が高いですが,これが正解です。

意外とシンプルなところに正解が配置されています。


3 介護保険法に基づいて市町村が介護保険を行うことは,市町村の第一号法定受託事務である。

介護保険は,自治事務です。よって間違いです。


4 第二号法定受託事務に関して,市町村は条例を制定することができず,都道府県知事が必要な規則を定めることになっている。

第二号法定受託事務は,都道府県が本来行う事務を市町村が行うものです。主体は受託する地方公共団体にあります。

この基本をしっかり押さえましょう。

市町村も第二号法定受託事務に関して条例を定めます。


5 必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,かつての機関委任事務と異なり,法定受託事務制度では認められないものとされている。

「代執行が何かについて分からない」と思うと答えられないように思うかと思います。

かつての機関委任事務,そして法定受託事務について無理に並べているので,余計な言葉が加わっています。


代執行が行えないのではあれば,

必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,法定受託事務制度では認められないものとされている。

でよいはずです。

人は嘘をつくとき饒舌になる

というものですね。

もちろん間違いです。

さて,代執行とは・・・

義務者が行わなかったことを行政庁が代わりに行うことです。
近年では,沖縄の米軍基地問題で代執行が行われました。それて耳に残っていた人もいるのではないでしょうか。

この米軍基地問題は,知事による承認取り消しについて,国が代執行を行いました。

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