2018年6月22日金曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~数字には意味がある

前回から,福祉行財政と福祉計画の中の「福祉行財政の動向」に入っています。
たくさんの数字が出てきます。

福祉行財政と福祉計画の攻略法~数字の覚え方のコツ
http://fukufuku21.blogspot.com/2018/06/blog-post_21.html

今日は,用語を整理します。

一般財源 お金の使い道が決まっていない収入 地方税,地方交付税など。
特定財源 お金の使い道が決まっていない収入 国庫支出金など。
民生費 地方公共団体の福祉に関する費用
扶助費 要援護者の支援のための費用など
補助費 各種団体に対する助成金など
公債費 借入金と利子の合計

これらを押さえて,今日の問題です。

第23回・問題45 「地方財政白書」(平成22年版)に基づく平成20年度の地方財政の状況に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 民生費について,都道府県の合計額と市町村の合計額を比較すると,都道府県は市町村の約2.5倍の規模となっている。

2 目的別歳出の構成比を団体種類別に見ると,都道府県においては民生費が最も大きな割合を占めるのに対して,市町村においては教育費が最も大きな割合を占める。

3 都道府県・市町村を通じた扶助費純計額の目的別内訳を見ると,老人福祉費が最も大きく,次いで児童福祉費,生活保護費の順となっている。

4 都道府県・市町村を通じた民生費純計額の財源構成を見ると,国庫支出金の割合が最も大きく,一般財源等の約2倍の規模となっている。

5 歳出全体に占める扶助費の割合を,政令指定都市と町村とで比較すると,町村の方が低い割合となっている。

またまた古い問題だと思う人もいるかもしれません。
しかし,この当時と今では金額は違っていても,割合はほとんど違いがありません。
なぜなら,新しい社会保険ができるなどの抜本的な制度改正はないからです。

今日のテーマ
数字には意味がある
を意識しながら,解説していきます。

1 民生費について,都道府県の合計額と市町村の合計額を比較すると,都道府県は市町村の約2.5倍の規模となっている。

民生費は,地方公共団体の福祉に要する費用です。

福祉は,市町村に権限移譲が進んでいます。

福祉六法のうち,都道府県がまだ所管しているのは,生活保護法,児童福祉法,母子及び父子並びに寡婦福祉法の三法のみです。

市町村は,福祉六法すべてを所管します。ただし,町村が生活保護法の事務を行う場合は,福祉事務所を設置している場合です。

福祉サービス費は,支給決定した者が支給します。

さて,ここまでの説明で,民生費は,都道府県と市町村ではどちらが規模が多いか分かりますか?

市町村は都道府県の2.5倍です。


2 目的別歳出の構成比を団体種類別に見ると,都道府県においては民生費が最も大きな割合を占めるのに対して,市町村においては教育費が最も大きな割合を占める。

市町村と都道府県を合計すると民生費が最も多いことは分かりました。

では市町村と都道府県を分けるとどうなると思いますか?

都道府県は,市町村立の小中学校の教職員の人件費を負担しています。少子化でも児童福祉費は意外とお金がかかるのです。

民生費の規模は,市町村の方が大きかったですね。都道府県は少なかったです。

この関係で,都道府県では教育費が第1位。市町村では民生費が第1位となります。


3 都道府県・市町村を通じた扶助費純計額の目的別内訳を見ると,老人福祉費が最も大きく,次いで児童福祉費,生活保護費の順となっている。

さて,最もハードルが高い問題です。

前回の問題を知っている人は簡単でしょう。

この後,何度も出題され,とうとう第30回では,そのせいで引っ掛けに使われてしまいました。

老人福祉費は,介護保険ができたことで,老人福祉法が適用されるものは少なくなっています。高齢化率が高まっても,老人福祉法が適用されるのはそれほど多くはありません。

児童福祉費は,高齢者と違って,児童全員に発生します。また児童手当もあります。少子化で児童数が少なくても,児童福祉費はかかります。

生活保護費は,保護率が上がっても,対象となるのは住民のうちのほんの一部です。

さて,この情報で,最も多いと思うのは,老人福祉費,児童福祉費,生活保護費,ではどれが多いと思いますか?

児童福祉費です。よって間違いです。


4 都道府県・市町村を通じた民生費純計額の財源構成を見ると,国庫支出金の割合が最も大きく,一般財源等の約2倍の規模となっている。

これも前回のものの焼き直し問題です。

国庫支出金は,使い道を決めて地方に支出されるものです。

最も多いのは,地方税,次は地方交付税,国庫支出金は第3位ということになります。

よって間違いです。

地方分権の時代に,国庫支出金(特定財源)が第1位になることはありません。そして財源移譲されている時代に,地方交付税(一般財源)が第1位になることはありません。そうなると,必然的に第1位は地方税(一般財源)となります。


5 歳出全体に占める扶助費の割合を,政令指定都市と町村とで比較すると,町村の方が低い割合となっている。

これが難しかったと思います。

扶助費 要援護者の支援のための費用など
補助費 各種団体に対する助成金など


扶助費が多いのは,市町村
補助費が多いのは,都道府県

では扶助費を町村と指定都市を分けるとどうなるのでしょうか。

とても難しいです。

指定都市の数は少ないですが,人口規模が大きいです。
指定都市は,都道府県の事務のうち,一部の権限移譲されています。

この情報を読んで,指定都市と町村ではどちらが扶助費は多いと思いますか?
答えは,指定都市です。

ということで,これが正解です。

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