一つ目は,国が福祉行政に力を入れるようになった「米騒動」
GHQ主導による「戦後改革」
市町村が福祉の第一線となった「福祉関係八法改正」
2025年に向けた現在進行中の「社会保障制度改革」
はその中心ではないでしょうか。もちろん,人によってターニングポイントとするのは違うと思います。
そのうちの福祉関係八法改正を見てみたいと思います。
その前に,2018年は「米騒動」から100年となります。
米騒動の背景,内容,その後の影響などをぜひ整理していただきたいと思います。
さて,改めて,福祉関係八法改正です。
今は,福祉計画は数多くあります。次回からはそれらを押さえていきたいと思いますが。その最初が「老人保健福祉計画」です。
これが福祉関係八法改正で,市町村に策定が義務付けられました。
老人福祉と障害者福祉に関する入所措置の権限が都道府県から町村に移譲され,福祉サービス提供の第一線の機関として市町村が位置づけられています。
知的障害者はその後権限移譲されました。児童福祉の入所措置は,現在も都道府県の役割のままです。
児童の入所措置は市町村に権限移譲されていない理由は,児童にとって施設入所は親から引き離されることを意味し,高度な判断が求められるからです。
それでは今日の問題です。
第29回・問題46 1990年(平成2年)以降の行財政等の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 いわゆる福祉関係八法改正によって,自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。
2 介護保険法の施行によって,新ゴールドプランが策定された。
3 「地方分権一括法」の施行によって,養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。
4 平成の大合併によって,市の数は減少した。
5 「三位一体の改革」によって,国庫補助金及び地方交付税が削減された。
(注)1 「地方分権一括法」とは,「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」のことである。
2 「三位一体の改革」とは,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる「骨太の方針2003」,平成15年6月27日閣議決定)などに基づいて行われた一連の地方財政改革をいう。
福祉行財政の動向の最終回には,とてもふさわしい問題だと思います。
それでは解説です。
1 いわゆる福祉関係八法改正によって,自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。
地域福祉計画は絶対に押さえておかなければなりません。
地域福祉計画は,2000年の社会福祉法で策定は任意とされました。
2018年に,策定は努力義務に変更されています。
福祉関係八法改正によって策定が義務付けられたのは,老人保健福祉計画です。
老人保健法が老人医療確保法に変更になった際に,老人保健計画の策定義務はなくなり,老人福祉計画のみに策定義務があります。
2 介護保険法の施行によって,新ゴールドプランが策定された。
ゴールドプランは,高齢社会の到来を見越して,1989(平成元)年に策定されたものです。
10年計画として策定されましたが,全国の目標値を積み上げると,ゴールドプランで示した数値を超えてしまい,数値を修正して作られたものが,新ゴールドプラン(1994・平成6年)です。
その後,1999年にゴールドプラン21が策定されたのが最後として,その後は高齢者福祉に関するものは策定されていません。
3 「地方分権一括法」の施行によって,養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。
「地方分権一括法」の施行によって,地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務に再編されました。
基本的に福祉に関する事務は自治事務です。
老人福祉法による入所措置も自治事務です。
よって間違いです。
養護老人ホームは,国試では超頻出です。
というのは,老人福祉法が制定する前から存在し,入所要件が「経済的理由」によるものとなっているからです。
養護老人ホームの始まりは,救護法により規定された「養老院」です。それが,旧・生活保護法で「養老施設」となり,1963(昭和38)年の老人福祉法で「養護老人ホーム」と規定されました。
この経緯から現在も入所要件に「経済的理由」があるのです。
しっかり覚えていきましょう。
4 平成の大合併によって,市の数は減少した。
いわゆる「平成の大合併」で,それ前までは,3,000以上あった市町村数が約1,700まで減少しました。
静岡市と清水市の合併のように,市同士の合併もあると思いますが,多くは市と町村との合併,町村同士が合併して市になる,といったことが行われました。
その結果として,減ったのは,町村数,増えたのは市ということになります。
5 「三位一体の改革」によって,国庫補助金及び地方交付税が削減された。
一般的に,三位一体の改革で行われたことは
①国庫補助金の削減
②税財源の権限移譲
③地方交付税の見直し
です。
地方交付税が見直されたことで,結果,どうなったのかはあまり語られていないことかもしれません。
もちろん地方交付税も削減しています。
<福祉行財政の動向のまとめ>
・社会保障関係費は,国の予算のうちで最も大きな割合を占めている。
・収入を国と地方を分けると国の方が多い。
・支出を国と地方を分けると地方の方が多い。
・地方の支出を都道府県と市町村に分けると市町村の方が多い。
・地方の収入のうち,最も多いのは,地方税である。
・地方の支出のうち,最も多いのは,民生費である。
・地方の支出を都道府県と市町村に分けると,都道府県で最も多いのは教育費,市町村で最も多いのは民生費である。
・民生費の内訳で最も多いのは,児童福祉費である。
これらは,1990年以降の動向を押さえると理解できます。
・中央集権から地方分権へ
・市町村の役割の拡大
これらは,今後大きな改革で路線変更がなされない限り,加速して進んでいきます。
一般財源を使って,市町村が知恵を出して地域共生社会を構築していくことになります。