2018年6月15日金曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~都道府県と市町村の整理

国家試験は,問題に正確性がなければなりません。つまり,正解選択肢であれば,誰が見ても見ても正解,間違い選択肢であれば,誰が見ても間違いでなければなりません。

その点,法制度に関する問題は,法制度を出題するので,正確性を担保しやすいと言えます。

間違い選択肢を作る際に,最も多く使われる手法は・・・

市町村と都道府県を入れ替える

法制度は数多くあり,すべてを覚えるのは至難の業です。

そのため,戦略が必要です。

共通事項を押さえて,例外を覚える

これだけで,知らないものが出題されても,かなり対応可能です。


<共通事項>
市町村は,高度な判断を求められる事務は行わない。
市町村は,専門職の確保・育成に関する事務は行わない。
市町村は,医療に関する事務は行わない。
市町村は,福祉に関する給付を行う。


<例外事項>
高度な判断を求められるものであるが,介護保険の要介護認定,障害者の障害支援区分認定は,市町村の事務。
福祉関係八法改正(1990)で,高齢者と障害者の入所措置は,市町村に権限移譲されている。
市民後見人の研修は,市町村が行う。

共通部分の裏返しは,都道府県の役割だということになります。

それでは,今日の問題です。


第29回・問題44 社会福祉制度の利用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。

2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。

3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。

4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。

5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


市町村と都道県の役割が整理されていればそんなに難しくはないですが,整理されていなければとてつもなく難しい問題だと思います。

国試はこういった問題が理想です。

正しく勉強した人は,必ず成果が出ます。

勉強していると,焦りや不安が出てきますが,ポイントを押さえれば,その壁は超えられます。

もう一度,前説を頭に入れて,問題を読みましょう。

<共通事項>
市町村は,高度な判断を求められる事務は行わない。
市町村は,専門職の確保・育成に関する事務は行わない。
市町村は,医療に関する事務は行わない。
市町村は,福祉に関する給付を行う。


<例外事項>
高度な判断を求められるものであるが,介護保険の要介護認定,障害者の障害支援区分認定は,市町村の事務。
福祉関係八法改正(1990)で,高齢者と障害者の入所措置は,市町村に権限移譲されている。
市民後見人の研修は,市町村が行う。


それでは,解説です。


1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。

児童の入所措置は,市町村に権限移譲されませんでした。

理由は,児童が施設入所する場合,親から児童を引き離すことになります。

極めて高度な判断が求められます。そのため市町村には,権限移譲されていないのです。
よって間違いです。


2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。

子ども・子育て支援法は,市町村が子ども・子育て支援の実施主体,国と都道府県は市町村を重層的に支えることを規定しています。

施設型給付(認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付)

地域型保育給付(小規模保育等への給付)

これらは市町村が支給決定しています。よって正解です。


3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。

これは市町村,都道府県の役割から外れた問題です。共通事項,例外事項に当てはまりません。

しかし,資力調査を行い,決定するのに7日間は短すぎると感じませんか。

答えは,14日以内です。よって間違いです。


4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。

障害福祉サービスは,社会福祉制度です。利用者が自己負担分を支払います。市町村はサービス事業者に介護給付費等を支払います。よって間違いです。

介護保険と違って,代理受領という考え方はありません。

5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。

福祉に関する給付は市町村。もちろん介護保険の施設介護サービス費等の支給は市町村です。よって間違いです。


<今日の一言>

市町村と都道府県の役割は,法制度が出題される科目では超頻出です。
ぜひ,自分なりに共通事項,例外事項を見つけ出してください。

勉強には,戦略が必要です。
このことによって,得点力が何倍にも高まります。

多くの人が苦手としている歴史や人名。

しかし,本当に差が出るのは,こういった法制度です。


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