任用資格と聞いて最もなじみ深いのは「社会福祉主事任用資格」でしょう。
福祉施設の施設長,生活相談員の任用資格に位置づけられているからだと思います。
社会福祉士がなかったときの名残だと言えるでしょう。
国にとって,社会福祉主事はとても重要な資格です。
戦後,旧・生活保護法の保護事務を補助していたのは,民生委員でした。
GHQは,それを問題視し,有給の官吏の創設を求めます。その結果できたのが,社会福祉主事です。
社会福祉士は,多くの職種の任用資格があります。
社会福祉主事もその一つです。
社会福祉士は,福祉事務所の社会福祉主事に任用することができるという意味です。
しかし,福祉事務所の中でも社会福祉士が任用できない聖域があります。
それが,GHQの肝いりで作られた生活保護の現業事務です。
社会福祉士がこの業務に就くためには,大学等で指定科目を履修していわゆる3科目主事を持っているか,社会福祉主事養成機関で学ばなければなりません。
ここまでは国試で出題されることはありませんが,社会福祉主事が補助機関になった時の流れを脈々と受け継いでいることにびっくりですね。
さて,今日の問題です。
第23回・問題44 社会福祉行政における任用資格に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 児童福祉司でなければ,児童福祉に関する相談・指導・助言を行うことを業としてはならない。
2 児童福祉司が職務を行う担当区域は,人口おおむね5千から8千を標準として,児童相談所長が定める。
3 都道府県は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
4 市町村の身体障害者福祉司は,当該市町村の福祉事務所の長の命を受けて,身体障害者の福祉に関し,当該福祉事務所の所員に対して技術的指導を行う。
5 社会福祉士が知的障害者福祉司に任用されるためには,知的障害者の福祉に関する業務に2年以上従事した経験が必要とされている。
勉強しなければ,まったく分からない問題だと思います。
そして,勉強した人でも,すぐ答えはこれだと思えないかもしれません。
そういった面では,頻出のものが並んだ問題ですが,難易度は極めて難しいからです。
それでは解説です。
1 児童福祉司でなければ,児童福祉に関する相談・指導・助言を行うことを業としてはならない。
児童福祉司は,児童相談所に必置の専門職です。平成28年の児童福祉法が改正されて,虐待防止のために児童相談所の組織が変更になっています。
そろそろ出題されてくることでしょう。
それについては,別の機会に詳しく紹介したいと思います。
さて,問題に戻ります。
福祉に関するもので,業務独占の資格は存在していません。もちろんこんな規定はありません。間違いです。
2 児童福祉司が職務を行う担当区域は,人口おおむね5千から8千を標準として,児童相談所長が定める。
平成28年改正で,配置数の標準数が変更になっています。
現在は,人口4万に1人以上配置することです。よって間違いです。
新しく加わったことは,
全国平均より虐待対応の発生率が高い場合には,児童虐待相談対応件数に応じて配置数の上乗せを行うこととして政令に規定する。
3 都道府県は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
身体障害者福祉司は,都道府県に必置の身体障害者更生相談所に置かれます。
よって間違いです。
4 市町村の身体障害者福祉司は,当該市町村の福祉事務所の長の命を受けて,身体障害者の福祉に関し,当該福祉事務所の所員に対して技術的指導を行う。
これが正解です。
しかしこれが難しいのは2つのポイントがあるからです。
一つ目のポイント 町村は福祉事務所の設置は任意とされている。
二つ目のポイント 福祉事務所の身体障害者福祉司の配置は任意。
必置の場合は,明確ですが,実際に配置されたときは,誰に指導を受けて何を業務にするかは,盲点です。
そういう面で,すぐに正解にできなったことでしょう。
しかし,ほかの選択肢をしっかり消去できれば,結果的にこれが答えとして残ります。
5 社会福祉士が知的障害者福祉司に任用されるためには,知的障害者の福祉に関する業務に2年以上従事した経験が必要とされている。
社会福祉士の場合は,児童福祉司,身体障害者福祉司,知的障害者福祉司ともに実務がなくても任用されます。
社会福祉主事の場合は,2年以上の実務経験を必要とします。
ここからも国は,社会福祉主事は保護事務のスペシャリストとして位置付けているということが分かるように思います。