既に今まででもいくつかは,出てきましたが,覚えるべき福祉計画の数が多くて整理しないととても歯が立ちません。
福祉計画に関しての平成30年4月から変更されたものをいくつか取り上げてみたいと思います。
・地域福祉計画の策定が任意から努力義務になった。
・医療計画の策定期間が,5年から6年になった。
・障害者総合支援法に基づく障害福祉計画と児童福祉法に基づく障害児福祉計画を「一体」で策定することができることとなった。
などなど。
この中で,特に重要なのは,地域福祉計画です。
各分野の上位計画として,包括した内容を定めることになりました。
地域福祉計画の特徴は,国による上位計画が存在していないことです。
自由に自分たちで工夫して地域福祉を作り上げなさい,ということなのだと思います。
<市町村地域福祉計画に含むべき事項>
(改正前)
一 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
二 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
三 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
(改正後)
一 地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項
二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
<都道府県地域福祉支援計画に含むべき事項>
(改正前)
一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施
二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助
三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成
(改正後)
一 地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項
二 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項
二 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項
三 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項
市町村地域福祉計画,都道府県地域福祉支援計画ともに
地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項
が加わっています。
しっかり覚えておきましょう。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題46 福祉計画等の目的に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。
2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。
3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。
4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。
5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。
難易度が高い問題です。
<法制度の基本>
法に定められた範囲で適用され,他領域を犯さない。
これはすべての法の基本原則です。
そのために,法制度のすき間が発生してしまうことがあります。
福祉計画に合わせると・・・
老人福祉計画は,老人居宅生活支援事業(居宅系サービス),老人福祉施設(入所系サービス)の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画です。
介護保険事業計画は,介護保険事業の供給体制の確保に関する計画です。
これを頭に入れながら,解説していきたいと思います。
1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)は,後期高齢者医療制度の根拠法です。同制度の保険者は,都道府県のすべての市町村による広域連合です。
医療費適正化計画を定めるのは,都道府県です。よって間違いです。
2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。
介護保険事業の確保に関する計画は,市町村介護保険事業計画で定めます。
老人福祉事業の確保に関する計画は,市町村老人福祉計画で定めます。
よって間違いです。
3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。
障害者に関する法制度は,障害者基本法と障害者総合支援法があります。
障害者基本法は,障害者の施策に関する基本的な計画で,定めるのは障害者計画です。
障害者総合支援法は,障害者の支援のための障害福祉サービス(自立支援給付と地域生活支援事業)に関する計画で,定めるのは障害福祉計画です。
障害福祉サービスの提供体制の確保等について定めるのは,障害福祉計画です。よって間違いです。
4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。
児童福祉法が根拠法となる市町村保育計画は,現在はなくなり,その内容は,子ども・子育て支援事業計画の中に含まれています。
子ども関係の法も2つあります。
次世代育成支援対策推進法と子ども・子育て支援法です。
この関係性は,障害者基本法と障害者総合支援法と似ています。
次世代育成支援対策推進法は,次世代育成支援に関する環境整備などに関するもので,定めるのは行動計画です。
子ども・子育て支援法は,子ども・子育て支援に関するもので,定めるのは子ども・子育て支援事業計画です。
行動計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画です。
子ども・子育て支援計画は,子ども及びその保護者に必要な子ども・子育て支援給付及び地域子ども・子育て支援事業に関する計画です。
よって間違いです。
5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。
これが正解です。基盤整備に関するものを定めるのは,都道府県地域福祉支援計画です。
〈今日のまとめ〉
福祉計画の種類はたくさんあります。
それぞれには根拠法があります。福祉計画を整理する時は,根拠法を押さえるのが効果的です。