ある人が以前言っていたことです。
学習戦略は,合格をつかむベクトル
その人曰く,「努力すれば,必ず結果が出る。しかし,その努力は必ずしも最適なものとは限らない」とのことです。
ここから,「学習戦略は,合格をつかむベクトル」という考え方につながっていきます。
合格するために一定レベルの知識が求められているとします。
変数Yが合格基準点を超える一定レベルの知識
変数Xが勉強に費やす時間(つまり努力)
係数aが戦略
定数bが試験の難易度
これを数式に表すと
Y=aX+b
となります。
社会福祉士の国試は,特にY=X(努力によって国試の点数が決まる)ではありません。
a(戦略)が間違っていると,Yに到達するには,X(勉強時間)が大きくならなければなりません。
合格基準点を99,定数bを9とすると
a(戦略)
0.1の場合 → Xは900
1の場合 → Xは90
1.1の場合 → Xは81.8
aは傾きなので,aが大きくなれば,Yに到達するには努力は小さくて済みます。
aが小さいと,より多くの努力をしなれければ,Yに到達できません。
何度も受験されている人は,「合格基準点にあと数点足りなかった」ということが毎年続いているのではないでしょうか。合格基準点の上下によって,自分の得点も同じように上下している状態です。
それは,努力が成果につながっていないことを示します。
昨年と同じ勉強法をしていると,必ず同じ結果になります。
なぜなら,努力した分前回よりも知識がついているはずなのに得点が伸びていないことを繰り返しているからです。
戦略は何よりも大切です。
係数aが0.9よりも1.1の方が良いです。
ということで,今日の問題です。
第28回・問題43 不服申立て制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国民健康保険の保険料に不服があるときは,国民健康保険団体連合会に審査請求することができる。
2 介護保険の要介護認定に不服があるときは,介護保険審査会に審査請求することができる。
3 生活保護の決定に不服があるときは,市町村長に審査請求することができる。
4 「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に不服があるときは,運営適正化委員会に審査請求することができる。
5 介護保険サービスの内容に不服があるときは,給付費等審査委員会に審査請求することができる。
不服申立てに関する出題は「福祉行財政と福祉計画」で出題されたのは,この時の一回だけですが,他科目では超頻出です。
旧カリ時代を含めてもほぼ毎回どこかの科目で出題されています。
つまり,覚える優先度はトップレベルだということになります。
今日の問題は,解ける人と解けない人がはっきり分かれることでしょう。
このような問題をしっかり押さえていくことが,合格するための戦略には欠かせません。
それでは解説します。
1 国民健康保険の保険料に不服があるときは,国民健康保険団体連合会に審査請求することができる。
国民健康保険団体連合会(国保連)は,利用者からの苦情を受けて,サービス事業者に対する必要な指導及び助言を行っています。
しかし国民健康保険の審査請求先ではありません。審査請求先は,都道府県に設置される国民健康保険審査会です。
よって間違いです。
国保連は,現行カリキュラムでは,超頻出です。第26回を除き,毎年出題されます。絶対に押さえておかなければなりません。
2 介護保険の要介護認定に不服があるときは,介護保険審査会に審査請求することができる。
これが正解です。介護保険の要介護認定の審査請求先は,都道府県に設置される介護保険審査会です。
3 生活保護の決定に不服があるときは,市町村長に審査請求することができる。
生活保護の審査請求先は,都道府県知事です。
生活保護法では,再審査請求の規定もあります。再審査請求先は厚生労働大臣です。
4 「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に不服があるときは,運営適正化委員会に審査請求することができる。
「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に関する審査請求先は,都道府県知事です。
都道府県知事は,都道府県に障害者介護給付等不服審査会が設置されている場合は,同審査会に審査を行わせることができますが,あくまでも審査請求先は,都道府県知事です。しっかり覚えていきましょう。
5 介護保険サービスの内容に不服があるときは,給付費等審査委員会に審査請求することができる。
給付費等審査委員会は国保連に設置され,保険者である市町村の委託を受けて介護給付費請求明細書等の審査を行っています。
介護保険サービスの内容に不服があるときは,国保連に苦情申立てができます。
審査請求は,行政の処分に対する不服申立て制度です。介護保険サービスは,行政の処分ではありません。
<今日の一言>
「現代社会と福祉」&「福祉行財政と福祉計画」をしっかり学ぼう!!
先述のように,不服申立てが「福祉行財政と福祉計画」で出題されたのはこの回のみです。
しかし,他科目では超頻出です。
この2つの科目は,他の科目に広げていくための入り口であると考える理由は,こんなところにあります。
特に,「福祉行財政と福祉計画」が取り扱っているのは,他分野でも多く取り扱われる法制度です。
他分野の総まとめであると考えるよりも,この科目でしっかり覚えたうえで,他分野に広げていった方が,確実な知識になりやすいです。ということは,国試全体の得点力を上げることにつながります。
この科目を苦手だと思わないで,しっかり学べば底力が必ずつきます!!
係数aを上げることに直結します。
少ない努力で最高のパフォーマンスを発揮するには,正しい学習戦略が欠かせません。
これからも私たちチームfukufuku21は,学習戦略を練るための情報を提供していきますので,ご参考にしていただけましたら幸いです。
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