2018年6月10日日曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法

今回から,「福祉行財政と福祉計画」を取り上げていきたいと思います。

この科目は,現行カリキュラムになる前は,「社会福祉原論」という科目の一部を成していました。

ここから分かるように,この科目は,児童,障害,高齢者といった「分野論」ではありません。

覚える内容自体は,この科目が他に比べて難しいということはありません。

なぜなら,旧カリキュラム時代からも出題されてきた内容とは言え,本格的に出題されるようになったのは,現行カリキュラムからなので,覚えるポイントがそれほどの広がりを見せていないからです。

しかし,試験問題になると,格段に難しくなります。

そのためには,覚える戦略が必要とします。そこはおいおい伝えていきたいと思います。


それでは,今日の問題です。

第27回・問題42 地方財政関係資料(平成24年2月発行(総務省))などに基づく2010年度(平成22年度)の地方財政に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

実は,この問題は,出題時点では成立していましたが,今は正解なしとなっています。

この問題の難易度は高いと思います。しかし,勉強をしっかりした人なら,何とか得点できたのかもしれません。

というのは,国試の特徴である

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

を踏襲しているからです。しかも,多くの人が手にする過去3年間の出題と重なっているからです。

少しずつ重なっている問題は,これです。

第24回・問題45 福祉行財政の動向に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。
2 平成19年度の社会保障給付費の財源については,約6割が税で,約4割が社会保険料で賄われている。
3 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。
4 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。
5 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。

重なっているところを確認しましょう。


第27回 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
 ↓   ↓
第24回 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。


第27回 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
 ↓   ↓
第24回 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。


第27回 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
 ↓   ↓
第24回 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。


第27回 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
 ↓   ↓
第24回 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。(ちょっとだけかすっている程度)

第27回 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。
 ↓   ↓
第24回 重なる部分なし。


5つの選択肢のうち,3つが完全に対応しています。

この科目は,苦手としている人が多いため,第24回国試では特に0点になってしまった受験生が多かったと言われています。

勉強が足りない人が点数が取れないのは,致し方ないと思います。

しかし,合格基準点に達していたにもかかわらず,0点科目になるのは,その科目だけが難易度が高いことを意味します。

大学生にとっては,不合格になると内定取り消しになることもあるので,大変な問題となってしまいます。

そこで,特にこの科目には,0点にならないように,第26回くらいから勉強した人だけが解ける仕掛けをしているように感じます。

その一つがこの問題です。

それでは解説です。

第27回 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
第24回 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。

国税と地方税の割合は6:4

国税の方が大きいということになります。

よって,第27回も第24回も間違いです。

第27回 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
第24回 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。

歳入は,国の方が大きかったですね。

支出を見ると,今度は国よりも地方の方が大きくなっています。

その比率は,第24回に出題されているように,地方が国の2倍以上です。

よって,第27回は間違い,第24回は正解です。


第27回 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
第24回 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。

第27回のこの選択肢が今は変わっているので,正解なしとなります。

地方交付税は,地方の財政などに合わせて,国税5税に一定割合を乗じて支出するものです。

出題時点での国税5税には,法人税,所得税,酒税,消費税,たばこ税でした。
なので,第27回は,この時点では正解です。今は,たばこ税が地方法人税に変わっています。

第24回は,固定資産税が入っているので間違いです。
なお,固定資産税は,国税ではなく,地方税です。

現在の地方交付税の財源となる国税5税は,

法人税,所得税,酒税,消費税,地方法人税

の5つです。

しっかり覚えましょう。

第24回をしっかり押さえていた人は,第27回国試で正解できたことでしょう。


第27回 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
第24回 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。

公債費は交際費ではありません。簡単にいうと,国及び地方公共団体の借金です。

国の公債費の方が大きいということになります。第27回は間違いです。地方の借金が大きいと危険な状態だと言えます。

第24回は,最も大きいのは社会保障関係費です。こちらも間違いです。


第27回 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。
第24回 重なる部分なし。

地方の歳入は,地方税が3割,地方交付税が約2割,国庫支出金が約2割です。

よって間違いです。

地方税が最も多いですが,半分以上はありません。よって間違いです。

<今日の一言>

地方税は,地方公共団体が集めて,自由に使い道を決めることができる一般財源です。

地方交付税は,国が集めた国税5税の一部を地方公共団体の財政に合わせて交付するものです。地方交付税も自由に使い道を決めることができる一般財源です。

国庫支出金は,国から地方に使途を決めて交付する特定財源です。

日本は,明治政府以来,国が方向性を決める中央集権国家として,近代化を図ってきました。

国が集めたお金を地方に交付します。

しかし,今は地方分権の時代です。そのため,財源を地方に移す「三位一体改革」が実施されました。

それでも,まだ地方税が3割程度です。

日本は,今地域共生社会の実現を目指しています。

地域共生社会では,地域が自分たちで考えて,自分たちで作り上げる社会です。そこには中央集権的な発想はありません。

住んでいる地域によって,提供されるサービスは異なって来ます。それに必要な財源も自分たちで集めなければなりません。

そのため,地方税はおそらくこれから伸びてくると思いますが,まだ今は3割程度です。

なお,第24回
平成19年度の社会保障給付費の財源については,約6割が税で,約4割が社会保険料で賄われている。

これは,超頻出問題です。しっかり押さえなけれはなりません。

日本の社会保障制度は,

社会保険制度
社会福祉制度
生活保護制度

で成り立っています。

日本の社会保険制度は,税も使われていますが,社会保険料が中心です。

社会福祉制度と生活保護制度は,税財源で運営されます。

そのうち社会保険制度は,大多数を対象としています。

そのため,税(公費)と社会保険料を比べると社会保険料の方が多くなります。

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