2018年6月5日火曜日

国家試験に合格する勉強法~社会福祉法の整理

社会福祉士の国家試験で最も多く出題される法制度は,社会福祉の基本法である社会福祉法です。

1951年の社会福祉事業法を改正して,2000年に成立しています。

法律そのものを読むことは,時間的にかかるので基本的にお勧めしません。

しかし,社会福祉法は別格です。必ず目を通さなければなりません。

基本法を押さえる基本は,基本的な柱を定めて,細かい規定は,通知などで行わることです。

つまり,社会福祉法は,基本的な柱を決めているものなので,一度目を通すと,頭に入りやすいですし,また全体像を押さえることができるということになります。

近年の社会福祉法の改正というと,社会福祉法人制度改革に関連するものに注目が集まりやすいですが,福祉政策全体から見たら,実は小さいものに当たるかもしれません。

今の課題は,地域包括ケアシステムの構築です。

平成30年改正では,そこを見据えた改正が行われています。

その一つが,地域福祉計画を高齢者,障害者,児童などの基本事項を定めるものとして,策定を努力義務化したことです。

最新の法制度は出題されない傾向にありますが,社会福祉の基本法である社会福祉法の改正,しかも今後の地域福祉につながる改正である今回の改正は出題される可能性が高いです。

もし出題されないとしても,国の方向性を押さえることで,理論系科目でさえも答えられる可能性が高まります。


国試の選択肢は5つあります。

正解選択肢を上手に隠すために,間違い選択肢を配置していきます。

正解選択肢には,特別な意味があるものが配置されます。

そこに気が付けば,得点力はぐーんと上がります。

人によっては,試験委員の出題意図を考えること,という表現するものです。

過去問を解くときは,そこを意識してみてください。


さて,今日の問題は,第22回国試問題を取り上げます。

第22回国試は,現行カリキュラムの第1回です。今後どのような問題を出題するかについて,方向性を示すような問題が多くあります。

その分,スタンダードな問題が多いので,毎年の問題を見てみると,第22回国試で出題されていた問題を繰り返し出題していることが分かります。


第22回・問題37 社会福祉法における地域福祉の推進等に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 地方社会福祉審議会とは,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,関係行政庁からの意見を踏まえて行政計画等を策定する機関である。
2 社会福祉法第4条では,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が,相互に協力し,地域福祉の推進に努めなければならないとされた。
3 厚生労働省社会・援護局長の通知により,社会福祉法第107条に規定された地域福祉支援計画の策定に当たって,都道府県は要援護者支援方策を盛り込むことが義務づけられた。
4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の三分の一以上が参加するものとする。
5 共同募金を行う事業は,第二種社会福祉事業であり,社会福祉協議会以外の者は共同募金を行ってはならない。

改めてこの問題を見ると,勉強した人は得点でき,勉強しない人は解けないという,極めて国試にふさわしい問題だと言えます。

それでは解説です。


1 地方社会福祉審議会とは,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,関係行政庁からの意見を踏まえて行政計画等を策定する機関である。

地方社会福祉審議会は,都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,関係行政庁に意見具申します。行政計画を策定する機関ではありません。


2 社会福祉法第4条では,地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者が,相互に協力し,地域福祉の推進に努めなければならないとされた。

これが正解です。地域福祉の推進主体は,「地域住民」「社会福祉を目的とする事業を経営する者」「社会福祉に関する活動を行う者」の三者です。

このうち,社会福祉に関する活動を行う者には,ボランティアなどか想定されています。

今回の改正で,以下の部分が加わっています。

地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

しっかり押さえておきましょう。


3 厚生労働省社会・援護局長の通知により,社会福祉法第107条に規定された地域福祉支援計画の策定に当たって,都道府県は要援護者支援方策を盛り込むことが義務づけられた。

市町村と都道府県の関係が理解できる問題です。

具体的な施策は,市町村の役割です。それを支援するのが都道府県の役割です。

要援護者支援方策は具体的なものです。

つまり,要援護者支援方策を盛り込むのは,市町村地域福祉計画だということになります。

よって間違いです。


4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の三分の一以上が参加するものとする。

これは,旧カリ時代から何度も引っ掛け問題として出題されてきたものです。

三分の二ではなく,過半数です。よって間違いです。


5 共同募金を行う事業は,第二種社会福祉事業であり,社会福祉協議会以外の者は共同募金を行ってはならない。

これも超頻出です。

共同募金は,第一種社会福祉事業,共同募金を実施するのは共同募金会です。よって間違いです。



<今日の一言>

国試は,5つの選択肢があります。

自分で問題を作るとよく分かりますが,間違い選択肢を作るのはとても難しいです。

今日の問題は,すべて意味のある選択肢で構成されていますが,問題によっては,間違い選択肢を出題するためにでたらめのものを出題することがあります。

また,本流ではないものを間違い選択肢に配置します。

そのことで,正解率は下がり,勉強した人は正解できて,勉強が足りない人は正解できない問題となります。

過去問を解くときは,問題の出題意図を推測しながら,解いてみましょう。

そうすると,正解選択肢がキラキラして見えてくることがあります。

それは,あなたの推測と試験委員の出題意図が一致していることを意味しています。

これを心がけると得点力は,グーンと上がります。

知らない人名が出題されても答えは見えてくるはずです。



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