2018年6月23日土曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~この科目を制したものが国試を制する!!

今週から,福祉行財政の動向を取り上げています。

「数字を覚えるのが大変」という人がいます。

そう思う人は数字を丸覚えしようとしていませんでしょうか。

「福祉行財政と福祉」は現行カリキュラムで,独立した科目となりました。

そのおかげで,何を覚えたら良いのかが,とても明確になったように思います。

旧カリキュラムの時は,「社会福祉原論」という科目に含まれていた内容です。

さて,今日のテーマです。

この科目を制したものが国試を制する!!

大学のカリキュラムによって,開講年次は変わってくるかもしれませんが,できれば「現代社会と福祉」と「福祉行財政と福祉計画」は,分野論を学ぶ前に学んでほしい科目です。

「福祉行財政と福祉計画」は,分野論の総まとめの科目である,と言う人もいます。私たちチームfukufuku21はそうだと思っていません。

分野論から入ると,制度全体が見えづらいです。

制度はどのように作られているのか,といった構造の根幹を押さえにくいのです。

勉強時間がたっぷりあれば,帰納的に事柄をまとめていくのも良いと思います。

しかし,国家試験には,「福祉行財政と福祉」とい制度を横断している科目があります。

この科目は,演繹的な学びができると思います。

つまり,制度の骨格を押さえ,分野論で深く学ぶというスタイルです。

テキストもそれを意識して作られたらよいのに,と思います。

チームfukufuku21は,どの制度にも当てはまる共通項を提示していきたいと考えています。

そういったことから,福祉行財政と福祉計画をしっかり押さえることが,国試の得点力を上げると考えています。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題42 地方財政関係資料(平成24年2月発行(総務省))などに基づく2010年度(平成22年度)の地方財政に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。

2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。

3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。

4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。

5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

現在ではこの問題は成立せず,答えはありません。

その理由が分かる人は相当勉強が進んでいます。

地域共生社会は,日本が明治政府以来,中央集権的に進めてきた政策を大きく転換させるものです。

1990年代からすでに地方分権は始まっていますが,ここにきて潮目が大きく変わっています。

これまでは,日本国内であれば,基本的に同じサービスが受けられました。

例としては,介護保険に見ることができます。ケアマネジャーが創設され,津々浦々の居宅の要介護者を支援しています。家族手当も出さずに,介護を社会化するのだ,という強い意図があったのだと言えます。

それがここにきて,「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)で地方がサービスを創出することになりました。

一億総活躍社会とは,サービス提供者,サービス受給者という線引きするものではなく,誰もが我が事として,地域福祉の担い手となるものです。

それが,国試でしつこく,

老人クラブは収益事業を行える
町内会は収益事業を行える
消費生活協同組合は福祉に関連した事業を行える

といった出題がされているところにつながっています。

総合事業は一つの例です。このようなものは,他分野でも出てくることでしょう。

それが地域共生社会です。

地方が自分たちで何かを行おうと思うと財源が必要です。

住民も企業も少ない地域は財源を確保することは大変です。

そこで重要となるものが,地方交付税です。

平成26年の税制改革で,「地方法人税」が創設されました。

これは地方という名称がついていますが,国税です。

これまでは,地方交付税は,法人税,消費税,酒税,所得税,たばこ税の国税5税の一定の割合を財源として地方に交付してきました。

この改革で,たばこ税から地方法人税を地方交付税の財源としたのです。そのために今日の問題は成立しなくなっています。

地方法人税は,一定の割合ではなく,そのすべてが地方交付税の財源とされます。

さて,今日の問題に戻ります。ポイントは,国の収入と地方の収入の関係,国の支出と地方の支出の関係,地方の収入の内訳です。

これからは,これからも必ず出題されることでしょう。

なぜなら,地域共生社会の実現には,財源が極めて重要だからです。

ポイントを押さえて,解説していきます。丸暗記ではすぐ忘れますが,理屈が分かれば,絶対に忘れません。

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。

国税は,国が集めるお金,地方税は,地方公共団体が集めるお金です。

2010年当時は,国が約60%,地方が約40%でした。今は少しその割合は近づいてきて,国が55%,地方が約45%になっていますが,国の方が多いです。よって間違いです。

国が集めると,地方公共団体の状況に応じて分配することができます。

そのため,国税は地方にとって極めて重要なのです。


2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。

さて,次は支出です。市町村は住民のニーズを知る基礎的自治体です。

都道府県は,市町村を広域的な立場から支援する広域的自治体,国は地方自治体の支援を行います。

以前のように,市町村の上部組織が都道府県,都道府県の上部組織が国,という関係ではありません。

この関係性で,国よりも地方の方が支出が多くなります。収入とは逆になっている逆の割合で,国が約40%,地方が約40%です。よって間違いです。

地方が多くなるのは,住民サービスを行うためです。国は整備基盤を行います。

地方に目を向けると,整備基盤を行うのは,都道府県の役割です。福祉における整備基盤とは,専門職の確保,質の向上などを指します。これは絶対に覚えておきたいです。


3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。

出題当時は正解でした。しかし今は税制が変わり,間違いとなります。

先述のように現在は,たばこ税に変わって地方法人税が加わっています。

地方法人税は,地方税である地方住民税の一部を国税化したものです。

そのため,地方法人税が創設されたといっても企業の税負担が増えたわけではありません。現政権がそのような政策を通すわけがありません。

地方法人税は,今まで国試で出題されてことはありませんが,創設されて数年が経っていますので出題されるには期が熟してきたと言えます。


4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。

公債費は,借金です。国の方が公債費が大きくなっています。よって間違いです。
5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

またまた前回に引き続き同じ設問です。

地方税は財源移譲によって大きくなっていくものかもしれません。しかし半分以上は占めません。そこまで地方税が大きくなってしまうと,地方格差が大きくなってしまうからです。

地方税が約35%,地方交付税が約20%,国庫支出金が約15%です。よって間違いです。
しっかり覚えましょう。

<今日の一言>

地方交付税は,お金の使途は決まっていません。

国庫支出金は,お金の使途が決まっているものです。

国庫支出金が大きいと中央集権的だと言えます。

一般財源が大きいと,地方分権だと言えます。

地方税が大きければよいかと言えば,必ずしもそうではなく,人口が少ない地方公共団体は財源を確保しにくいものとなります。

地域差をなくすために,国税が必要です。

財源移譲し,国庫支出金を減らし,地方交付税を見直す。

これが三位一体改革と呼ばれた改革です。

地方交付税の財源として,消費税に目が向きがちですが,地方法人税が創設されたことも忘れてはいけません。

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