旧カリキュラムの法学と現カリキュラムの権利擁護と成年後見制度の大きな違いは,現在の科目では,成年後見制度は必ず出題されるところです。
科目名にも入っているので当然ですね。
それでは,解説なしに今日の問題です。
第22回・問題73
成年後見に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。
2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。
3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。
4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。
5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。
さすがは,現行カリキュラムによる1回目の国試の第22回の出題っぽいです。
重要ポイントを押さえています。
ほとんどの人はもう第22回の問題は見ることも手に入れることも困難ですが,第22回の問題は,これからはこのように出題します,
準備よろしくね,と宣言している問題がそろっています。
そのため,実はその後繰り返し繰り返し出題される率は,第22回が一番多いです。
だからと言って,古本屋やネットオークションで入手しても,制度改正についての知識がないと危険ですのでおすすめできません。
さて,それでは詳しく見ていきましょう。
1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。
法定後見には,後見,保佐,補助の3類型があります。
そのうち,後見類型は,財産管理権,代理権,取消権が付与されます。
被後見人は,事理弁識能力を欠く常況にある者です。
そのため後見人の取消権は,すべての法律行為に関してあります。
ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消すことができません。
これは特に重要なところです。
また,婚姻,離婚などの身分行為も取り消すことができません。これらは保佐類型,補助類型も同様です。
問題に戻ると,建物の贈与を受けても取り消すことができます。
よって間違いです。
2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。
保佐類型は,精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者です。
保佐人には同意権と取消権が付与されます。
同意権とは「この法律行為は行ってもよい」と保佐人が同意することです。
後見人に同意権はありません。その理由は,後見人が同意した法律行為であっても期待する法律行為は行うことができないと考えられるからです。
さて,後見開始の審判についてです。
申立権者の申立てによって,家庭裁判所は後見開始の審判を行います。
家庭裁判所の職権で成年後見人を選任します。
よって間違いです。
職権で行うのは,成年後見人の選任であり,後見開始の審判ではありません。
これは何度も出題されているポイントです。確実に覚えましょう。
3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。
先述のように,身分行為は取り消すことができません。
よって間違いです。
4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。
先述のように後見人には,同意権はありません。
それは同意していても被後見人には期待する法律行為を行うことができないと考えられているためです。
後見人が同意していても同意していなくても,被後見人のなした法律行為は取り消すことができます。よって間違いです。
5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。
被後見人は,先述のように「事理弁識能力を欠く常況にある者」です。
しかし,一時的に意思能力を有していた場合でも,取り消すことができます。
よって正解です。
なぜなら,被後見人は法律行為が制限されているからです。
<今日の一言>
成年後見制度は,一見複雑そうに見えるかもしれませんが,過去問や模擬問題集を丁寧に押さえていけば,十分に対応可能です。