2017年12月3日日曜日

国試に合格する勉強法~医療保険を徹底分析!

日本の医療保険は,全国民が何らかの制度に加入する「国民皆保険」が特徴です。

工場労働者などいわゆるブルーカラーを対象とした1922年の健康保険法は,日本初の社会保険となったものです。

その後,さまざまな制度ができて,それらを組み合わせて,「国民皆保険」が実現しています。

そのため,一見複雑そうに見えると思います。

しかし,国家試験自体はそれほど難しい出題はなされていません。

制度の全体をざっくり覚えると十分対応可能です。


さて,ここで絞り込みです。

医療保険制度

健康保険
国民健康保険
船員保険
各種共済
後期高齢者医療制度

このうち,国試でよく出題されるのは,健康保険,国民健康保険,後期高齢者医療制度の3つです。

船員保険,各種共済はほぼ出題されません。この2つはほぼ捨てても良いです。

健康保険,国民健康保険,後期高齢者医療制度を覚えるだけで良いです。

さて,先日のおさらいです。

誰が取り扱うの?(保険者)
誰が加入するの?(被保険者)
誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)
誰が保険料を納付するの?(納付義務者)
どんな時に給付されるの?(保険事故)
どのくらい払うの?(保険料率)

これらに焦点を当てていきますね。


誰が取り扱うの?(保険者)

 健康保険 ➡ 各保険者
 国民健康保険 ➡ 市町村(平成304月から都道府県も保険者となる),国保組合
 後期高齢者医療制度 ➡ 都道府県区域の全市町村が加入する広域連合

※健康保険には,主に中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」(前身は,政府管掌健康保険)と主に大企業の従業員が加入する「健保組合」(健康保険組合)があります。

国民健康保険には,自営業者,農林漁業者,無職の者などが加入する「市町村国保」,同業者などを組合員とする「国保組合」があります。


誰が加入するの?(被保険者)

 健康保険 ➡ 適用事業所の被用者(75歳未満)
 国民健康保険 ➡ (市町村国保)自営業者,農林水産業,無職の者など。(国保組合)同業者など。
 後期高齢者医療制度 ➡ 75歳以上,または6574歳で一定の障害状態であることの認定を受けた者。



誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)

 健康保険 ➡ 労使折半(任意継続の場合は自己負担のみ)。
 国民健康保険 ➡ 全額自己負担(事業主折半がないのは当然)
 後期高齢者医療制度 ➡ 全額自己負担(事業主折半がないのは当然)

  ※後期高齢者医療制度の特徴は,現役世代からの後期高齢者支援金があることです。
   財源:保険料1割,支援金4割,公費5割。※公費は5割を超えない。
   公費の内訳 ➡ 国:都道府県:市町村=4:1:1 
  
現役世代の後期高齢者支援金
 各制度の75歳未満の加入者数で割ったものをそれぞれの保険者が負担していましたが,2017年から保険者の総報酬額の多寡に応じて支援金を負担する総報酬割を全面的に導入しました。介護保険と同じです。


誰が保険料を納付するの?(納付義務者)
 
 健康保険   ➡ 事業主
 国民健康保険 ➡ 世帯主(世帯主が健康保険の被保険者であっても,扶養義務者に国保の人がいれば納付義務が発生)
 後期高齢者医療制度 普通徴収(年金額が18万円未満) 特別徴収(年金額が18万円以上,年金から天引き)



どんな時に給付されるの?(保険事故)

医療保険 ➡ けが,出産など。  ※付加給付は法定給付以外の給付。
 協会けんぽ ➡ 傷病手当金あり(法定給付)。付加給付なし。
 健保組合  ➡ 傷病手当金あり(法定給付)。付加給付あり。
 国民健康保険 ➡ 傷病手当金は任意給付(実際には給付している市町村国保はない)
 後期高齢者医療制度 ➡ 傷病手当金なし。付加給付なし。 


どのくらい払うの?(保険料率) 

 協会けんぽ ➡ 都道府県単位
 健保組合 ➡ 組合が定める
 共済組合 ➡ 組合が定める
 国保組合 ➡ 組合が定める
 市町村国保 ➡ 市町村が定める
 後期高齢者医療制度 ➡ 広域連合が定める


さて,これらを頭に入れて,今日の問題です。

23回・問題52 

医療保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
(この問題は現在は成立しない)


1 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の前身は,中小企業等で働く従業員やその家族が加入していた政府管掌健康保険である。


2 後期高齢者医療制度の被保険者は,日本に住む75歳以上の高齢者のみである。


3 後期高齢者医療制度の運営主体は,市町村単位の広域連合である。


4 前期高齢者医療制度は,国民健康保険・被用者保険の各保険者が,被保険者の所得に応じて費用負担を調整している。


5 大企業等で働く従業員やその家族が加入する組合管掌健康保険においては,すべての組合の保険料率は同率である。


制度が変わり,現在は成立しない問題ですが,内容を覚えるにはとても良い問題です。

それでは詳しく見ていきましょう。


1 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の前身は,中小企業等で働く従業員やその家族が加入していた政府管掌健康保険である。

これが正解です。

健康保険はもともと国(社会保険庁)が運営する政府管掌健康保険でしたが,一連の不祥事で協会けんぽに移管されています。

社会保険庁は,年金保険も管掌していましたが,その業務は,日本年金機構に移管されています。


2 後期高齢者医療制度の被保険者は,日本に住む75歳以上の高齢者のみである。

一定の障害のある65歳以上75歳未満の者も対象です。よって間違いです。



「のみ」は間違い選択肢をつくるときの常とう手段です。


3 後期高齢者医療制度の運営主体は,市町村単位の広域連合である。

都道府県を単位とした広域連合が運営主体です。よって間違いです。


4 前期高齢者医療制度は,国民健康保険・被用者保険の各保険者が,被保険者の所得に応じて費用負担を調整している。

出題時点では,各保険者の75歳未満の加入者数に応じて負担金を拠出していましたが,現在は,総報酬割が全面的に導入されています。


出題時点では×でしたが,今は正解となりそうです。


5 大企業等で働く従業員やその家族が加入する組合管掌健康保険においては,すべての組合の保険料率は同率である。

健保組合は,それぞれの組合で保険料率を定めます。よって間違いです。

「すべての」は間違い選択肢をつくるときの常とう手段です。


<今日の一言>


複雑そうに見える制度でも,視点を定めることで理解しやすくなります。

ひと手間かけることは,すこし遠回りに見えるかもしれません。

しかし,実はそれが確実に覚えていくためのコツです。


ほかのものと関連付けながら覚えていくことは,試験委員の仕掛けたトラップにはまらないために重要です。

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