「社会調査の基礎」は,午後の試験の最初の科目です。この科目で勢いをつけて,解き進みたいところです。
社会福祉士の国家試験の科目は19科目あります。ほとんどの科目は他の科目とどこかでつながっていますが,この科目はほとんどつながりません。
唯一つながるのは「地域福祉の理論と方法」の地域福祉計画の見直しする時に,どんな方法を使うか,という事例問題でしょう。
KJ法,アンケート収れん法などの知識が必要です。
この科目が苦手だと思うのは,他の科目との関連があまりないところにあると考えられます。
さて,今日は,横断調査と縦断調査を押さえていきます。
国家試験では,第24回と第27回の2回のみの出題ですが,1問まるごと出題されています。
ぜんぜん難しくないので,しっかり押さえて備えたいところです。
横断調査
ある時点で行う調査。
縦断調査
一定の期間を開けて,複数回行う調査。同じ対象者(パネル)に対して複数回行うパネル調査は縦断調査の一つ。
さて,これを押さえて今日の問題です。
第24回・問題78
横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
この科目は,知識がそのまま答えになるものよりは,ちょっと思考を使って問題を読む必要がある問題が多いのが特徴です。
そういう意味では,理論系科目に位置すると言えるでしょう。
それでは詳しく見ていきましょう!!
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
複数回行うのが縦断調査です。よって間違いです。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
パネル調査は,縦断調査の一種です。
よって間違いです。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
因果関係とは,例えば「生活習慣と健康状態」などです。
一回きりの横断調査よりも同じ対象者に複数回行うことの方が向いています。
よって正解です。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
これがちょっと頭を使う問題ですね。
内閣支持率は全体の数値です。一人ひとりの態度を表しているものではありません。
支持していた人が不支持になった数と不支持から支持になった数が同数なら,全体の数値は本科しないことになります。
よって間違いです。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
これはちょっと難しかった問題です。
「パネルの摩耗」という言葉が出題されたのはこの回が初めてだったからです。
しかし,ヒントはあります。
かっこの中に「脱落」という言葉があるからです。
脱落は,途中でいなくなってしまう意味が読み取れます。そう思うことができれば,この選択肢は消去できたはずです。
なぜなら脱落は「第1回目」で起きることではなさそうだ,想像できるからです。
よって間違いです。
パネルの摩耗とは,調査を複数回行う過程で,調査対象者(パネル)が少なくなっていくことです。