8月以前から勉強を本格化させた人は,これからが仕上げの時期になります。
仕上げには,過去問を使うのが適切です。
なぜなら・・・
①国家試験の問題に慣れる。
②参考書を読むよりも頭に残りやすい。
といった効果があるからです。
もちろん最後の仕上げの時期であっても,模擬問題集,模擬試験問題,参考書は平行して行う必要はあります。
ただ,過去問を使って解く時(一般的に手にする3年分),内容を覚えることも大事ですが,丸覚えすることは絶対にやめましょう。
思考を動かさないと,簡単に試験委員の仕掛けたトラップにはまります。
このブログでは,これからは得点につながりやすい法制度をまとめていきます。
しかし,理論系の科目で0点になってはいけないので,今回は,どのように思考を動かしたらよいのか,その一部を紹介します。
取り上げる科目は「社会理論と社会システム」です。
この科目は,苦手としている方が多いと思います。なぜなら頻出のものが少ないからです。
しかも頻出のものであっても出題する時に表現を変えられると,まったく別のものに見えてくるから始末に悪いと言えます。
それでも突破口はあります。
さて,それでは詳しく解説していきます。
過去問を使って得点力を上げる覚え方(具体例)
Q 家族システム理論では,家族成員の生活段階の課題はその人独自のものであり,解決するには個別対応が効果的であると考える。
A 間違い。
家族システム理論は,家族成員は家族を構成する要素ととらえる。
そのため,家族システムアプローチは,問題のある人に個別に対応するのではなく,家族の相互作用にアプローチすることに特徴がある。
【思考ポイント】
家族システムに関連する設問で「個別に」と記述されていれば間違いとなる。
「個別に」という表現に着目しています。
国試は決して深い理解を求めているのではなく,その意味を正しく理解することが大切です。
家族システムに関して・・・
正しい確率が高いもの
交互作用
全体に働きかける など
間違いになる確率が高いもの
個別に(個々に) など
さて,次にいきましょう。
Q 矢を3本まとめると1本のときより折れにくくなるが,そのような相互作用に着目し,個々の特性の組合せから論理的に導き出される新たな効果を「創発特性」という。
A 間違い。
創発特性は,システムの構成要素が交じりあい,個々の要素にはない新しい特性が生まれていくことで,論理的に導き出されるものではない。
個々の総和よりも組織全体では高い生産性を上げることがあるが,新しい特性が生まれたと考えることができる。
【思考ポイント】
創発特性の問題は「個々の要素にない新たな特性が生まれる」を意味する文章に着目する。
創発特性をもう一つ・・・
Q 複数の要素が交じりあい,一定量を超えて蓄積されていくことで,元の要素にない新たな性質が生成してくることを創発特性という。
A 正しい。
創発特性は,システムの構成要素が交じりあい,個々の要素にはない新しい特性が生まれていくことである。例えば,個々の総和よりも組織全体では高い生産性を上げることがある。これは新しい特性が生まれた結果(創発特性)と考えることができる。
思考しながらしっかりと覚えることが必要です。思考は「試行」です。
模擬試験を受けて,成績が悪かったら,自信がなくなる,と言う人がいますが,模試は「試行」しながら「思考」する訓練の場です。
「試行」なのですから,失敗しても良いです。
国試で失敗するのはとても残念なことですが,模試は自分の思考の方向性が正しいのか「試行」してみて,もしその思考が間違っていれば,それを修正するための場となります。
さて,次の問題です。
Q デュルケム(Durkheim, E.)は,異質な個人の分業による有機的な連帯から,同質的な個人が並列する機械的連帯へと変化していくと考えた。
A 間違い。
デュルケムは,「同質的な個人が並列する機械的連帯」から「異質な個人の分業による有機的連帯」に進化すると述べた。
農業で説明すると,農家が集まって(同質な個人),生産から販売までを行うことから,農家は生産・仲買は買付け・小売が販売(異質な個人)というように社会は進化する。
【思考ポイント】
社会進化は「機械的連帯→有機的連帯」と押さえる。
ここでデュルケムという人名に引っ張られてそれを強烈に覚えてしまい,その内容が正しく覚えないと簡単にトラップにはまります。
さて,次です。
Q 社会進化論では,近代社会への移行を産業型社会から軍事型社会への進化であるととらえた。
A 間違い。
スペンサーは,「軍事型社会から産業型社会へ」「単純社会から複合社会へ」進化する社会有機体説を提唱した。
イギリスでは,無敵艦隊の撃破時は軍事的社会,産業革命時は産業型社会,ととらえられる。
【思考ポイント】
社会有機体説は社会進化論なので,「軍事型社会→産業型社会」「単純社会→複合社会」と進化することを押さえる。
ここでもスペンサーという人名に引っ張られてそれを強烈に覚えてしまい,その内容が正しく覚えないと簡単にトラップにはまります。
さて,次です。
Q ジンメル(Simmel,G.)は,社会は分業の体系であると考え,同質な個人の連帯である機械的連帯から異質な個人の分業による有機的連帯に変化していくと考えた。
A 間違いです。
社会分業論を提唱したのは,ジンメルではなく,デュルケム。社会連帯は,機械的連帯(同質な個人のつながり)から有機的連帯(分業の結果,異質な個人がつながる)に進化するとした。
【思考ポイント】
社会分業論は,社会進化論なので,「機械的連帯→有機的連帯」と進化することを押さえる。
ジンメルが主語になる出題は多いですが,実際に正解選択肢として使われることはほとんどありません。そういう意味では,悲しい存在です。
因みにジンメルは「形式社会学」という領域を研究しました。
社会の形式とは,例えば,上位と下位,支配と服従,などです。
社会進化論的に覚えるものとしては,
ゲマインシャフト ➡ ゲゼルシャフト
応用としては・・・
コミュニティ ➡ アソシエーション
一次集団 ➡ 二次集団
などもあります。
<今日のまとめ>
このようにただ解くのではなく,自分なりに思考することが大切です。
特に再チャレンジ組で毎年数点の差で不合格になっている人は,合格できる知識は十分にあると思います。
国試が終わってから,問題を振り返ってみたとき,分かった問題があり,それを加えると合格点に達していたという人は,合格できる知識は十分あると思ってください。
あとは,ちょっとしたスパイスを加えることで,その知識を得点力に変えることができます。
そのスパイスとは,「思考」(試行)です。
頻出のものであればあるほど,国試ではひねりを加えて出題します。
問題を解く訓練をする時,思考を意識しないと何度も同じような問題が出題されても間違えます。
逆に言えば・・・
思考を意識することで,確実に得点できるようになります。
ぜひ問題を解く時はこれを意識するようにしてください。
これは現役組も同じです。