障害福祉サービスは,それぞれのポイントを押さえておけば,必ず理解できます。
しかも障害者自立支援法から障害者総合支援法に変わっても,それほど大きな変更はなされていません。
介護保険は,制度発足以降,数々の改正が実施されて今に至っているのとは対照的です。
今日の問題は,過去に一度取り上げた問題ですが,ここで今一度しっかり確認するためにもう一度取り上げます。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題57
「障害者総合支援法」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 就労移行支援は,通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対して,雇用契約の締結等による就労の機会を提供するとともに,必要な訓練等の便宜を供与することである。
2 障害福祉サービスの利用者負担額と補装具の利用者負担額を合算して一定の額を超える場合,特定障害者特別給付費が支給される。
3 市町村は,地域生活支援事業としてサービス管理責任者研修を実施し,事業所や施設のサービスの質の確保を図らなければならない。
4 市町村は,介護給付費の支給申請があったときは,障害者又は障害児の心身の状況,その置かれている環境等について調査を実施し,要介護認定を行わなければならない。
5 障害者又は障害児の保護者の居住地が明らかでないとき,介護給付費の支給決定は,現在地の市町村が行う。
今改めてこの問題を見てみると,極めて重要なポイントが含まれていることが分かります。
それらを押さえながら詳しく見ていきましょう。
1 就労移行支援は,通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対して,雇用契約の締結等による就労の機会を提供するとともに,必要な訓練等の便宜を供与することである。
障害者総合支援法に基づく就労支援は,3種類しかありません。
「就労移行支援」
「就労継続支援(A型)」
「就労継続支援(B型)」
このうちの特徴があるものを整理すると・・・
利用期限を定めるもの ➡ 就労移行支援
雇用契約を結ぶもの ➡ 就労継続支援(A型)
問題に戻ると,「雇用契約の締結等」と記述されているので,就労継続支援(A型)だと分かります。
よって間違いです。
2 障害福祉サービスの利用者負担額と補装具の利用者負担額を合算して一定の額を超える場合,特定障害者特別給付費が支給される。
「特例〇〇」 ➡ 支給決定前に給付されるもの。
「特定〇〇」 ➡ 低所得者が施設入所した際に,費用負担軽減のために給付されるもの。
よって間違いです。昨日に引き続きまたまた出てきましたね。
この問題は,「高額介護合算療養費制度」になぞらえて出題されています。
しかし,医療保険や介護保険と違い,障害福祉サービスは,基本的には「応能負担」(支払い能力によって負担額が変わる)なので,高額療養費制度や高額介護合算療養費制度のような制度は必要とされません。
特定障害者特別給付費がたとえ分からなくても,思考(試行)することで足りないピースは埋められます。
必要なのは深い知識ではなく,しっかりした知識です。
3 市町村は,地域生活支援事業としてサービス管理責任者研修を実施し,事業所や施設のサービスの質の確保を図らなければならない。
市町村の役割
高度かつ専門的な判断が求められるのは,市町村の役割ではない。
専門職の研修は,市町村の役割ではない。
これは必ず覚えておかなければなりません。
サービス管理責任者(サビ管)は,専門職です。専門職に対する研修は都道府県の役割です。
よって間違いです。
要介護認定,障害支援区分の認定は,高度かつ専門的な判断が求められるものですが,これらは例外事項です。
繰り返しになりますが,必要なのは深い知識ではなく,基本を押さえたしっかりした知識です。
4 市町村は,介護給付費の支給申請があったときは,障害者又は障害児の心身の状況,その置かれている環境等について調査を実施し,要介護認定を行わなければならない。
思わず引っ掛けられそうな出題です。
要介護認定ではなく,障害支援区分の認定です。
なお,障害児の場合は,障害支援区分の認定は行いません。
5 障害者又は障害児の保護者の居住地が明らかでないとき,介護給付費の支給決定は,現在地の市町村が行う。
これはかなり難しいものだと思いますが,他の選択肢をしっかり消去できれば,あぶり出しでこの選択肢が残ります。
これが正解です。
介護給付費の支給決定は市町村の役割なので,市町村に変わって都道府県が行うことはありません。そのため,現在の市町村が支給決定を行うのは極めて合理的なのです。
<今日のまとめ>
都道府県と市町村の役割の違いを押さえておくことは,必須です。
基本は以下のとおり。
市町村の役割
高度かつ専門的な判断が求められるのは,市町村の役割ではない。
専門職の研修は,市町村の役割ではない。
要介護認定や障害支援区分の認定は,高度かつ専門的な判断が求められますが,これらは例外です。
基本を押さえて,例外があったらその部分だけを覚えるのが最も効率的であり,あいまいな知識にしないための覚え方のコツです。