2017年12月13日水曜日

試験に合格する勉強法~「低所得者に対する支援と生活保護制度」攻略~貧困との闘い

貧困は,経済活動が始まった当初からあったものですが,社会問題になったのは,近代化の過程においてです。

長く本人の問題で貧困に陥ると考えられてきましたが,ブースらの貧困調査で社会のシステムが雇用や環境などが貧困の原因であることが明らかになりました。

これを「貧困の発見」と言います。


この時代の貧困は,生きるか死ぬかのぎりぎりラインの絶対的貧困の時代です。貧困は古典的自由主義の結果として生まれてきていると考えられるようになり「ナショナルミニマム(国による最低限度の生活保障)」が提唱されます。

貧困対策は,慈善から社会政策に転換していくことになります。


悲惨な戦いとなった第一次,第二次世界大戦を経て,米英はますます経済発展していきます。そんな時代に貧困は過去のものだと思われていましたが,その陰に貧困があることがタウンゼントによって明らかになりました。

これを「貧困の再発見」と言います。


絶対的貧困の時代よりも生活レベルは上がっているものの周りと比べると劣っていることが貧困とされる相対的貧困の時代です。


現在では,相対的貧困率,ジニ係数,エンゲル係数などで,貧困状態が明らかにになってきています。



<相対的貧困率>

 一人あたりに可処分所得(税負担等を除いたもの)を低い順にならべて,中央値(50パーセンタイル)の半分に満たない人の割合。


<ジニ係数>
所得格差がどの程度あるのかの数値。格差が小さい場合,ゼロに近くなり,格差が大きい場合,1に近くなります。


<エンゲル係数>
 支出に占める食費の割り合い。食べることは,必需品です。支出の中には必ず食費が一定の率で含まれます。数字が大きい方が生活が苦しいことを意味します。

さて,これらを押さえて今日の問題です。


27回・問題63 貧困と格差に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 一人当たり可処分所得を低い順に並べ,中央値の半分に満たない人の割合を相対的貧困率という。

2 ジニ係数は,その数値が小さくなるほど,所得分布が不平等であることを表す。

3 タウンゼント(TownsendP)は,栄養学の観点から科学的,客観的に貧困を定義する絶対的貧困の概念を主張した。

4 貧困の再発見とは,貧困線付近の低所得世帯より公的扶助世帯の方で可処分所得が上回ってしまい,いつまでも公的扶助から抜け出せないことをいう。

5 生活保護世帯の子どもが成長し,再び生活保護世帯になるという貧困の連鎖については,日本では確認されていない。


先の説明で十分解ける問題でしょう。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 一人当たり可処分所得を低い順に並べ,中央値の半分に満たない人の割合を相対的貧困率という。


これが正解です。


平均値ではなく中央値です。気をつけましょう。

平均値は,代表値の一つですが,はずれ値に影響されやすいです。

つまり所得がずば抜けて高い人がいると平均値が上がってしまうということです。


2 ジニ係数は,その数値が小さくなるほど,所得分布が不平等であることを表す。


ジニ係数は,数値が大きいと格差が大きいのか,格差が小さいのかがいつも聞かれます。

数値が大きい ➡ 格差が大きい
数値が小さい ➡ 格差が小さい

よって間違いです。


3 タウンゼント(TownsendP)は,栄養学の観点から科学的,客観的に貧困を定義する絶対的貧困の概念を主張した。


タウンゼントが主張したのは,相対的貧困の概念です。

マーケットバスケット方式という科学的な方法を使って絶対的貧困を定義づけたのはラウントリーです。



4 貧困の再発見とは,貧困線付近の低所得世帯より公的扶助世帯の方で可処分所得が上回ってしまい,いつまでも公的扶助から抜け出せないことをいう。


貧困の再発見は,貧困問題は過去のものだと思われるほど経済発展した社会の裏で貧困があることが明らかになったことです。

よって間違いです。



5 生活保護世帯の子どもが成長し,再び生活保護世帯になるという貧困の連鎖については,日本では確認されていない。


十分な教育がなされないために,子どもがまた貧困に陥る貧困の再生産はもちろん起きています。

そのために生活困窮者家庭の子どものための学習支援が生活困窮者自立支援法の任意事業にあります。



<今日のまとめ>

貧困の発見(19世紀末) ➡ ブースらの貧困調査 ➡ 絶対的貧困の概念


貧困の再発見(20世紀中期) ➡ タウンゼント ➡ 相対的貧困の概念

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