ケアマネジメントは,日本では介護保険の導入とともに広く知られるようになりましたが,ケアマネジメントを行うのは,高齢者分野に限ったものではありません。
しかし,国家試験問題を解く時は,高齢者のケアマネジメントをイメージするとミスすることなく,正解できます。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題106 相談援助技術の一つとしてのケアマネジメントに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 ケアマネジメントは,アウトリーチによるものではなく,クライエント自らが相談にくることから始められる。
2 ケアマネジメントは,一つの社会資源で対応可能なニーズを抱えるクライエントに効果的である。
3 ケアマネジメントでは,社会資源の活用が必要であるが,これには,クライエント本人の家族などは含まれない。
4 ケアマネジメントでは,様々な社会資源を選択的に活用して計画を立てる。
5 ケアマネジメントでは,慎重に立てられた計画に基づき,利用するサービスを多くの専門家が連携して決定するので,計画の見直しはほとんど行われない。
何と下手に作られた問題なのでしょう。
ケアマネジメントを知らない小学生でもおそらく正解できます。
近年でも下手な問題は時々見られますが,これほど明確なものはめったにあるものではありません。
この問題のように知識がなくても正解できてしまう問題は,国家試験に向きません。
なぜなら,受験生に差がつかないからです。
理想の問題は,勉強した人は解けて,勉強が足りない人は解けないものです。
この問題の正解は,選択肢4です。
4 ケアマネジメントでは,様々な社会資源を選択的に活用して計画を立てる。
この文章で引っ掛かる表現は「選択的に」だと思います。しかし,ここで使っている意味は,これがないと様々な社会資源をすべて使うという意味にとる人もいるかもしれないという保険のためだと考えられます。
ほかの選択肢は圧倒的にだめですが,念のために解説します。
1 ケアマネジメントは,アウトリーチによるものではなく,クライエント自らが相談にくることから始められる。
焦るとこれも正解だと思う人もいるかもしれません。
しかし,この出題スタイルは,正解になることはありません。
もちろんアウトリーチも含みます。
2 ケアマネジメントは,一つの社会資源で対応可能なニーズを抱えるクライエントに効果的である。
この選択肢は,選択肢2と逆の意味です。
この選択肢があることで,正解は,選択肢2と4に絞り込むことができます。
ここに気がつくことができれば,得点力は上がるでしょう。
3 ケアマネジメントでは,社会資源の活用が必要であるが,これには,クライエント本人の家族などは含まれない。
社会資源には,フォーマルな社会資源とインフォーマルな社会資源があります。
家族や地域住民は,インフォーマルな社会資源です。
5 ケアマネジメントでは,慎重に立てられた計画に基づき,利用するサービスを多くの専門家が連携して決定するので,計画の見直しはほとんど行われない。
これは,引っ掛けようとする意図によってつくられた問題です。
この選択肢を正解だと思う人はいないかと思いますが,この文章のようにムダな表現を付け加えているものは,引っ掛けるための仕掛けです。