多くの受験生が間違った認識をしているのではないか,と思うのは,事例がある科目は,勉強せずとも点数が取りやすい,ということです。
確かに事例問題は勉強せずとも正解できる可能性は高いです。
しかし,それはすべての受験生に対して言えることです。
社会福祉士の国家試験の合格率は30%程度なので,70%の人は不合格になります。
勉強せずとも正解できる可能性のある問題は,ほかの受験生と差がつきません。
ここで正解できないことは,合格に向けたレースから脱落していくことになります。
このように考えると事例問題対策が必要であることがよくわかるでしょう。
事例問題は,必ず事例の中に答えにつながる情報を組み込んでいます。
つまり,事例問題で正解するためには,そのポイントに気がつくことが欠かせません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題102 J相談員(55歳,男性,社会福祉士)はKさん(23歳,女性)の相談にのり,週1回の面接を始めて,約2か月が経過した。ここ2,3回の面接では,Kさんはようやく父親との子ども時代の思い出について語り始め,「父親には愛されていなかったと思う」といった。J相談員は,Kさんの気持ちを理解しようと傾聴することに努めた。J相談員はKさんとの距離が少し近づいたように感じた。
今回来所したKさんに,J相談員がにっこりと会釈すると,彼女はこれまでの親しげな応対ではなく,「あなたもやはり父と一緒で,やさしくすれば私が喜ぶとでも思われるのですか」,「信頼していたのに,もうあなたを信じられません」といってうつむいた。
次のうち,J相談員に対するKさんの言動を説明するものとして,最も適切なものを一つ選びなさい。
1 感情過多
2 感情移入
3 感情転移
4 選好感情
5 感情失禁
今の事例と違って情報量が少し多いので,ポイントがぼけやすいですが,父親のことが関係していることはわかるでしょう。
父親との子ども時代の思い出
あなたもやはり父と一緒で,やさしくすれば私が喜ぶとでも思われるのですか
という情報から,KさんがJ相談員に対して,転移感情がありそうなことが想像できると思います。
信頼していたのに,もうあなたを信じられません
という言葉に反応すると訳がわからなくなります。
ということで,正解は「感情転移」です。
転移・逆転移は,知っていても感情転移は知らないと思うとわけがわからなくなりますので,そういったことにこだわるのは,国試では厳禁です。
ほかの選択肢の中で,ちょっとわかりにくいのは,選好感情でしょう。
選好感情は,何かを選ぶときの感情のことです。
具体的には,商品Aと商品Bがあってどちらかを選ぶ場合,その時にかかわる感情です。
しかし,こんなことを覚えてももう出題されないでしょう。
この中で覚えておきたいのは,転移・逆転移,感情失禁あたりです。