社会福祉士の国家試験は,現時点(第33回)までに大きな改正が一度行われています。
改正前には,介護概論という科目がありました。
平成19年度改正によって,介護概論は消滅し,老人福祉論と合わせた「高齢者に対する支援と介護保険制度」になりました。
問題数が限られるため,出題のレパートリーは狭く,第22~33回の国家試験を見ると,びっくりすることに認知症ケアに関する問題はたった1回しかありません。
今日取り上げるのも超レアな問題です。
出題の優先順位を考えたとき,出題する余裕がなくなってしまったのかもしれません。
しかし,介護概論の流れをくむ出題は一定数あるので,確実に正解できるようにしておきたいです。
特に覚えておきたいは,片麻痺のある人の介護です。
・車いすへの移乗
・服の着脱
・杖歩行
この3点は,確実に覚えておきたいです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題120 事例を読んで,訪問介護員が行うAさんへのこれからの介護に関する次の記述のうち,訪問介護計画に盛り込むべき内容として,優先順位の最も高いものを一つ選びなさい。
〔事例〕
Aさん(88歳,男性)は寝たきり状態で,自分で寝返りができない。84歳の妻が日中,食事の世話やおむつを換えたりしているが,夜間は一度も換えず,入浴もしていない。身長165cm,体重42kgで手足は細くやせている。
老老介護の状態を知った近所の住民が市役所に連絡し,介護保険制度を利用することになり,介護支援専門員による居宅サービス計画が作成された。訪問介護が開始されてから1か月後,訪問介護員が仙骨部に褥瘡の初期段階と見られる発赤があるのを発見した。
1 家事負担の軽減として部屋の掃除を増やす。
2 体位変換の回数を増やし,妻の協力も依頼する。
3 妻に料理のメニューを紹介する。
4 日中はおむつを厚く重ね,交換回数を減らす。
5 このまま様子を見る。
今は褥瘡の治療とケアの方法が確立されていますが,歴史を見たとき,たかだか30年くらいの話です。
それよりも前は,褥瘡を逆に悪化させるようなケアが行われていました。
知らないというのは,怖いものです。
さて,この問題は「優先順位の最も高いもの」を選びます。
「適切なものを選ぶもの」ではないことが注意ポイントです。
今の国家試験では,この事例ほど情報は多くないので,何を優先すべきなのか明確です。
ポイントは,これからの介護に関するものです。
つまり,今までの状況と変わったものを選べばよいことになります。
今までと変わっていない状況のものは,すでに訪問介護計画に含まれていると考えられるからです。
これらの状況に合うものは選択肢2しかありません。
2 体位変換の回数を増やし,妻の協力も依頼する。
体位変換は2時間ごとに行うというのは,エビデンスがありませんが,褥瘡の予防には,除圧が欠かせません。
ほぼ完全な除圧には,エアマットレスの利用が適切ですが,この問題の中にはないので,体位変換が適切です。
2時間ごとというのは,おおよその目安であり,もっと少なくて良い人もいますし,もっと多くする必要がある人もいます。
Aさんは,低栄養状態にあると考えられるので,褥瘡リスクは高い人です。
そのため,「3 妻に料理のメニューを紹介する。」も適切ですが,初期の褥瘡があるAさんにとって,優先すべきなのは,褥瘡を悪化させないための対応です。