認知症ケアに関する出題は,多くの人が思うよりも多くありません。
認知症に関する知識が問われた問題は,たった1回しかありません。
もう1回は,事例で取り扱われているだけです。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題121 認知症と認知症ケアに関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
1 認知症の症状は,大きく中核症状と周辺症状に分けられ,出現する記憶障害,徘徊,妄想は中核症状であり,認知症の診断やその進行を判断する際の目安になる。
2 暴言・暴力,過食・異食などの周辺症状は,認知症の進行に伴って出現回数が増加することが特徴であり,ケア環境による影響は見られない。
3 認知症の高齢者本人に働きかける方法の一つとして,過去の思い出に働きかけて心理的な安定や意欲の向上を図ろうとする回想法がある。
4 介護施設における居室環境は,生活単位をできるだけ大規模化し,高齢者が空間を把握し易くしたほうがよい。
5 同居の近親者が認知症と診断され,不安を訴える家族に対しては,直ちに現実と向かい合い,介護技術を習得するよう指導する。
認知症ケアを少しでも知っている人なら,とても簡単な問題でしょう。
国家試験問題は,決して深い知識が問われているのではないことが,よくわかるでしょう。
知っていれば,正解できる。
知らなければ,とてつもなく難しく思える。
国家試験とは,こういった性格のものです。
深い知識がなければ合格できないという試験では決してありません。
参考書に書かれている内容を7割程度確実に押さえることができれば,ボーダーラインは超えます。
さて,今日の問題の正解は,選択肢3です。
3 認知症の高齢者本人に働きかける方法の一つとして,過去の思い出に働きかけて心理的な安定や意欲の向上を図ろうとする回想法がある。
人のひねりもひっかけもない文章です。
しかし,国家試験が怖いのは,1問1答ではないので,ほかの選択肢とまの関連で正解できないということです。
この問題で,そのようなトラップになっているのは,選択肢1です。
1 認知症の症状は,大きく中核症状と周辺症状に分けられ,出現する記憶障害,徘徊,妄想は中核症状であり,認知症の診断やその進行を判断する際の目安になる。
この選択肢がこの問題の難易度を高めているのは,
記憶障害,徘徊,妄想の3つのうち,記憶障害が中核症状,徘徊,妄想は周辺症状だからです。
この問題で得られる教訓としては,このように列記されているものは,その中に正しくないものを含める可能性があるということです。
今の国家試験の問題は短いので,実際にこのように出題するのはあまりないかもしれませんが,覚えていて損はないはずです。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
2 暴言・暴力,過食・異食などの周辺症状は,認知症の進行に伴って出現回数が増加することが特徴であり,ケア環境による影響は見られない。
この問題が正解なら,
暴言・暴力,過食・異食などの周辺症状は,ケア環境による影響は見られない。
という文章でよいはずです。
それにもかかわらず
認知症の進行に伴って出現回数が増加することが特徴であり
を加えているのは,受験生を引っ掛けるためです。
暴言・暴力,過食・異食などの周辺症状は,ケア環境による影響は見られない。
この文章だけなら,受験生は引っ掛かりにくいのです。
暴言・暴力,過食・異食などの周辺症状は,認知症の進行に伴って出現回数が増加することが特徴であり,ケア環境による影響は見られない。
このように出題すると,引っ掛かる人が増えます。
こういったことに気がつくことができるようになるとミスをかなり減らすことができるでしょう。
4 介護施設における居室環境は,生活単位をできるだけ大規模化し,高齢者が空間を把握し易くしたほうがよい。
高齢者介護の現場を少しでも知っているなら,生活単位の大規模化は不適切であることが。わかります。
そのために,ユニットケアと呼ばれる生活単位を小規模化する方法が用いられます。
5 同居の近親者が認知症と診断され,不安を訴える家族に対しては,直ちに現実と向かい合い,介護技術を習得するよう指導する。
「直ちに」には,多くの場合,正解にはなりませんが,家族教育はまだ先の話です。
家族も支援の対象者です。家族の気持ちを受け止めた対応が何よりも大切です。