母子保健法は,1965年(昭和40年)に制定された法律です。
地味な法律かもしれませんが,日本人の福祉の向上には,とても重要な意義があるものです。
乳幼児の死亡率を大幅に下げることにつながったからです。
現代では考えられませんが,かつての日本では乳幼児の死亡はものすごく多かったのです。
同法で規定したのは,母子健康手帳と子どもの健康診査です。
さらには,妊産婦に対する訪問指導も規定されています。
ほかにもさまざまなありますが,これだけ聞いただけでも,とても重要な法制度だということがわかるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題138 母子保健法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 市町村は,妊娠の届出をした者に対して母子健康手帳を交付しなければならない。
2 市町村は,母子健康センターを設置しなければならない。
3 新生児の訪問指導を行う者は,保健師の資格を有していなければならない。
4 市町村は,満1歳を超え満1歳6か月に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。
5 妊産婦とは,妊娠中又は出産後1か月以内の女子をいう。
古い問題なので,母子健康センターと出題されていますが,これは,現在の母子健康包括支援センターです。
この問題は,古い知識を持っている人は正解できません。
制度が変わっているからです。
それでは,解説です。
1 市町村は,妊娠の届出をした者に対して母子健康手帳を交付しなければならない。
これが正解です。
これが正解だと思えない人がいる理由は,平成3年までは母子健康手帳の交付は都道府県の事務だったからです。
しかし,現在では,健康に関するものは市町村の事務に位置づけられます。
2 市町村は,母子健康センターを設置しなければならない。
母子保健センター,すなわち,現在の母子健康包括支援センターは,市町村が設置する努力義務規定となっています。
介護保険の地域包括支援センターが努力義務なのと同じです。
3 新生児の訪問指導を行う者は,保健師の資格を有していなければならない。
新生児の訪問指導は,この母子保健法で重要な制度の一つです。
保健師も訪問指導を行いますが,そのほかに医師や助産師なども訪問指導を行うことができます。
4 市町村は,満1歳を超え満1歳6か月に達しない幼児に健康診査を行わなければならない。
市町村が実施しなければならない健康診査は,
1歳6か月児健診と3歳児健診です。
1歳6か月児健診は,満1歳6か月を超え満2歳に満たない幼児を対象とするものです。
健康に関するものは,市町村の役割です。
5 妊産婦とは,妊娠中又は出産後1か月以内の女子をいう。
母子保健法が規定する妊産婦は,妊娠中又は出産後1年以内の女子です。