保護観察は,更生保護制度の中心をなすものです。
保護観察の対象は,以下のとおりです。
保護観察の対象
対象 |
良好措置 |
不良措置 |
|
1号観察 |
保護観察処分を受けた少年 |
仮解除 |
少年院送致など |
2号観察 |
少年院から仮退院した少年 |
退院 |
仮退院の取消し |
3号観察 |
刑事施設から仮釈放された者 |
なし |
仮釈放の取消し |
4号観察 |
保護観察付き執行猶予者 |
仮解除 |
執行猶予の取消し |
5号観察 |
婦人補導院から仮退院した者 |
なし |
仮退院の取消し |
5号観察は,売春防止法で規定されています。
それ以外は,更生保護法が根拠法です。
このうち,今日のテーマは,仮釈放です。
仮釈放の審理は,改悛(かいしゅん)の状があり,有期刑についてはその刑期の3分の1,無期刑については10年を経過したのちに,地方更生保護委員会が行います。
仮釈放の手続きは,基本的には以下のようになります。
①刑事施設の長は,収容されている者が規定された期間を過ぎると,地方更生保護委員会にその旨を通告します。
↓ ↓
②地方更生保護委員会は,その通告によって,仮釈放の許否の審理を行います。
「基本的」というのは,通告があってもなくても,仮釈放の許否の審理を開始することができるからです。
審理する際,地方更生保護委員会は,刑事施設の長の意見を聴かなければなりません。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題148 事例を読んで,この場合の法律関係に関する次の記述のうち,仮釈放の手続として,正しいものを一つ選びなさい。
〔事例〕
裁判所によって3年の懲役刑の言渡しを受けた受刑者が,まじめに刑務所生活を送り,改悛の状があると評価され,2年を経過したところで,仮釈放の手続がとられることになった。
1 仮釈放は,検察官が許可した場合に許される。
2 仮釈放は,地方更生保護委員会の決定があれば許される。
3 仮釈放は,裁判員の合意があれば許される。
4 仮釈放は,裁判所の判断があれば許される。
5 仮釈放は,矯正施設の長が認めれば許される。
この事例の受刑者は,改悛の状があると評価されています。
そして刑期は3年です。2年を経過した,ということなので,3分の2を経過したということです。
刑期が3年なので,最短では1年を経過したところで仮釈放の審理が開始されてもよかったのでしょうが,この人はおそらくその時点ではまだ改悛の状があるとは評価されなかったのでしょう。
しかし,この時点では,仮釈放が許されるための基準はとりあえずクリアしています。
さて,仮釈放はどこが決定するのでしたか?
正解は,選択肢2です。
2 仮釈放は,地方更生保護委員会の決定があれば許される。
仮釈放の許否の審理は,地方更生保護委員会の取り扱い事務です。
仮釈放した者が保護観察で不良だった場合,仮釈放が取り消されることもあります。それを不良措置といいます。
<今日の一言>
上記の表で,3号観察は,良好措置がありません。その理由は,仮釈放の途中で本出所することを認めると刑期が短くなってしまうからです。
なお,5号観察も良好措置がありません。この理由は,婦人補導院の入院期間は6か月と短いためです。5号観察も保護観察の対象となりますが,国家試験で出題されることはないと言ってもよいので,ほとんど覚える必要はありません。