ICFは,それまでのICIDHに変わって用いられているものです。
まずは,用語を確認します。
心身機能 |
身体系の生理的機能(心理的機能を含む) |
身体構造 |
身体の解剖学的部分 |
機能障害 |
心身機能または身体構造上の問題 |
活動 |
課題や行為の個人による遂行のこと |
参加 |
生活・人生場面への関わりのこと |
活動制限 |
個人が活動を行うときに生じる難しさのこと |
参加制約 |
個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと |
環境因子 |
人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと |
背景因子には,環境因子のほかに個人因子がありますが,ICFでは,社会的・文化的に差があるため,定義づけしていません。しかし,それまでの人生の経験など個人的なものであることには間違いありません。
これらのうち,「心身機能・身体構造」「参加」「活動」は,「生活機能」という概念でまとめられています。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題3 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活機能とは,心身機能,身体構造及び活動の三つから構成される。
2 活動は,能力と実行状況で評価される。
3 活動とは,生活や人生場面への関わりのことである。
4 個人因子には,促進因子と阻害因子がある。
5 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
「社会福祉士の国家試験は,日本語の問題である」と豪語する人がいます。
確かにそういった問題もありますが,それだけでは絶対に合格することはできません。
こういった問題を見てもらうとわかりますが,確実な知識が求められます。
今の時点(国家試験の1週間前)に,この問題が解ける人は,もうほとんど仕上がってきていると言えます。
自信をもって良いです。
さて,解説です。ポイントは,「活動」と「参加」を整理して覚えていることです。
1 生活機能とは,心身機能,身体構造及び活動の三つから構成される。
「生活機能」は3つあるという覚え方では間違います。
生活機能は,「心身機能・身体構造」「参加」「活動」で構成されています。
ここでは示しませんが,ここで間違った人は,ICFの図をもう一度目に焼き付けておく必要がありそうです。
2 活動は,能力と実行状況で評価される。
これが正解です。
この問題は,かなり難しいです。なぜなら,今なら評価はどのようになされるか,参考書などに書いてあるので勉強できますが,この当時はおそらく記述がなかったと思います。
ほかの選択肢を消去することで結果的にこの選択肢が残ります。
これが国家試験の怖いところです。
国家試験がとても難しく感じるのは,こういったタイプの問題が出題されるからです。解答速報で答えを確認するまで正解できたかどうか実感できません。
3 活動とは,生活や人生場面への関わりのことである。
活動は,「課題や行為の個人による遂行のこと」です。
今まで何度も何度も繰り返して出題されてきたものです。
活動と参加の区別が大切であることを教えてくれます。
4 個人因子には,促進因子と阻害因子がある。
個人因子には,促進因子も阻害因子もありません。個人因子は,その人そのものなので,こういったものがあると,その人を否定することにつながります。
促進因子と阻害因子があるのは,環境因子です。
5 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
参加制約は,「個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと」です。
「個人が活動を行うときに生じる難しさのこと」は,活動制限です。
〈今日の一言〉
国家試験は,まったく同じ表現で出題されることは,ほとんどありません。
しかし,ICFの用語は,厚生労働省が用いている用語がそのまま出題されています。
特に「活動」と「参加」は,区別しておくことが大切です。それがうまくできないことがそれぞれ「活動制限」「参加制約」となります。