2022年1月19日水曜日

障害者総合支援法の就労支援系サービス

障害者の就労支援には,障害者総合支援法に基づくものと障害者雇用促進法に基づくものがあります。


そのうち,障害者総合支援法に基づくものは,訓練等給付の中に位置づけられています。


障害者総合支援法は,障害者自立支援法を改正したものですが,この障害者自立支援法は,それまで障害種別ごとにさまざまなサービスがあったものを同法でまとめ,障害種別をなくしたことが特徴です。


旧制度では,通勤寮,福祉工場など,今の人が聞いたら,何それ? と思うような制度であふれています。


今の障害者に対するサービスもたくさんあって覚えるのは,けっこう大変かもしれませんが,旧制度のときよりもかなりシンプルになっているので,覚えやすいはずです。


といっても旧制度を知らなければ,それは実感できないことかもしれません。


第22回・問題146 障害者自立支援法に基づく,就労移行支援事業及び就労継続支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 就労移行支援事業及び就労継続支援事業は,旧制度に基づき障害別に設置されていた福祉工場や授産施設などを,障害種別にかかわらず,目的別に再編成することを意図して制度化されたものである。

2 就労移行支援事業は,就職に向けての訓練を中心とした事業であることから,利用申込みの窓口は,公共職業安定所になっている。

3 就労継続支援A型事業,B型事業とも,利用者は原則として最低賃金法など労働法の適用を受ける。

4 就労継続支援事業についても,利用者の一般就職が最終目標とされることから,利用期間には期限が設けられている。

5 就労継続支援A型事業で雇用されている利用者は,職場適応援助者によるジョブコーチ支援を受けなければならない。


古い問題なので,障害者自立支援法となっていますが,問題の中身は,今でも通用します。


さて,この問題ですが,問題作りがあまりに下手すぎです。


こんな問題ばかりだったら,勘の良い受験生は知識なしでも正解できてしまうので,国試問題としては適切ではありません。


この意味がわかる人は,国試当日にかなり高い点数を取れることでしょう。

自信をもって良いと思います。


まずは,正解です。


1 就労移行支援事業及び就労継続支援事業は,旧制度に基づき障害別に設置されていた福祉工場や授産施設などを,障害種別にかかわらず,目的別に再編成することを意図して制度化されたものである。


前説で述べたとおりです。


そのほかの選択肢もみていきます。


2 就労移行支援事業は,就職に向けての訓練を中心とした事業であることから,利用申込みの窓口は,公共職業安定所になっている。


障害者総合支援法の利用窓口は,市町村です。


公共職業安定所が利用窓口となるのは,公共職業訓練などです。


この問題のつくり方は,余計なものを付け加えて,受験者を迷いの道に引き込むものです。


この選択肢が正しければ,


就労移行支援事業は,利用申込みの窓口は,公共職業安定所になっている。


で良いはずです。


それを「就職に向けての訓練を中心とした事業であることから」という一文をつけて,「ああそうだ」と思わせるのです。


賢い人はこんなところに引っ掛からないようにしてください。



3 就労継続支援A型事業,B型事業とも,利用者は原則として最低賃金法など労働法の適用を受ける。


原則として最低賃金法など労働法の適用を受けるのは,雇用契約を結んで利用するA型です。


もしこの選択肢が正しければ,


就労継続支援事業は,利用者は原則として最低賃金法など労働法の適用を受ける。


で良いはずです


そうではなく「就労継続支援A型事業,B型事業とも」と出題しているので,どちらかは適用を受けないのではないかと推測することができます。



4 就労継続支援事業についても,利用者の一般就職が最終目標とされることから,利用期間には期限が設けられている。


利用期間に期限が設けられているのは,就労移行支援事業です。


就労移行支援事業に利用期間が定められているのは,この期間に一般就労が可能かどうか判断するためです。


就労継続支援事業は,福祉的就労の機会を提供するものなので,利用期間を定める意味がありません。


この選択肢が正しければ,


就労移行支援事業,就労継続支援事業ともに利用期間が設けられている。


で良いはずです。


そうなっていないところが,いかにも怪しいです。


5 就労継続支援A型事業で雇用されている利用者は,職場適応援助者によるジョブコーチ支援を受けなければならない。


ジョブコーチの支援を受けることは義務ではありません。

必要なら支援を受けるでしょうし,必要でなければ支援を受ける必要はありません

これは一般就労した場合も同じです。


この選択肢だけ,ほかの選択肢とは考え方を変えなければなりません。


義務というのは,実はそんなにあるものではないのです。

勉強したことがないものが,「〇〇しなければならない」と出題されたら,なるべくその選択肢は選ばないことが大切です。


なぜなら,義務規定なら,かなり重要なのでどこかで目にする可能性が高いからです。


ただし,これは勉強をきっちりしてきた人だけの話です。


<今日の一言>


今日の問題は,改めて読んでみると,問題の作り方がとても下手だと思いませんか。

試験委員も人の子です。

この分野のエキスパートかもしれませんが,国試問題を作るのはコツが必要です。


このような下手な問題を見つけたら,試験委員もかわいく感じることでしょう。

この心の余裕が国試に良い結果をもたらします。


しかし,こういった問題がみられるのも第36回国家試験までかもしれません。

第37回からは,試験委員に対する支援として,研修などが行われるかもしれないからです。

第37回からの国家試験について

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/01/37.html


第36回までは今日の問題のような問題は出題される可能性があるので,国家試験はまだまだ楽しめます。

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