厚生労働省では,高齢者虐待防止法に基づいて,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」を毎年公表しています。
現時点(2022年1月)で最も新しい調査は,令和元年度のものです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/000708459.pdf
こういった毎年出されるものがあると,どの年度のものを覚えたらいいの? と思う人もいると思いますが,手元にあるもので大丈夫です。
新しいものが出たら,新しいものを覚えなければならない,というのは,大きな間違いです。
なぜなら,動きのあるもの,つまり年度によって順位が変わるものは,出題されない傾向にあるからです。
また,数字は細かく出題されることはないので,ざっくり覚えるだけでよいです。〇.〇%と出題されるのではなく,約〇割といった感じで出題されます。
国家試験を長年追っかけているので,断言できます。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題127 「平成19年度 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)に見る高齢者虐待の実態に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 養介護施設従事者等による虐待において,虐待の種別として介護放棄が最も多く,以下,身体的虐待,心理的虐待,経済的虐待,性的虐待の順となっている。
2 養介護施設従事者等による虐待において,被虐待高齢者の人数(割合)は年齢が高くなるにしたがって多くなっている。
3 養護者による虐待において,近隣住民・知人から相談・通報されるケースは少なく,全体の1割にも満たない。
4 養護者による虐待において,虐待者の被虐待高齢者との続柄の中で,息子の配偶者が最も多く,以下,息子,夫,妻,娘などの順となっている。
5 養護者の虐待において,虐待への対応として虐待者と被虐待高齢者の分離を行った事例が全体で5割を超え,深刻な状況がうかがわれる。
ずいぶん古いものを持ってきたな,と思う人もいるでしょう。
しかし,驚くなかれ。
これから15年以上経った現在でも,傾向はほとんど変わっていません。
解説では,新しい数字を示しますが,正解は変わっていないということに着目してほしいと思います。
それでは解説です。
1 養介護施設従事者等による虐待において,虐待の種別として介護放棄が最も多く,以下,身体的虐待,心理的虐待,経済的虐待,性的虐待の順となっている。
最も多いのは,身体的虐待です。
介護放棄していたら,身体的虐待は起きないと思いませんか?
介護施設での介護放棄は,職務放棄です。
介護しないのに給料をもらうのは,給料ドロボーと言わざるを得ません。
2 養介護施設従事者等による虐待において,被虐待高齢者の人数(割合)は年齢が高くなるにしたがって多くなっている。
被虐待高齢者は,「85~89歳」と「90歳以上」を比べると90歳以上のほうが少なくなっています。
3 養護者による虐待において,近隣住民・知人から相談・通報されるケースは少なく,全体の1割にも満たない。
これが正解です。
近隣住民・知人からの相談・通報は,約3%です。
これが国家試験です。5%に満たないではなく,「1割に満たない」と出題されているところがポイントです。
小さくずらすのではなく,このくらいの幅をもっと出題します。そのため,国試合格に必要な数字は,ざっくりでよい,という結論が得られるのです。
4 養護者による虐待において,虐待者の被虐待高齢者との続柄の中で,息子の配偶者が最も多く,以下,息子,夫,妻,娘などの順となっている。
最も多いのは,息子です。全体の4割を占めます。
国家試験では,2位以下が問われることはまずないので,1位のものだけを確実に押さえるのが適切です。
2位以下も覚えようとすると覚える量が増えて,さらには間違うことにもつながります。
5 養護者の虐待において,虐待への対応として虐待者と被虐待高齢者の分離を行った事例が全体で5割を超え,深刻な状況がうかがわれる。
分離を行ったものも決して少なくありませんが,3割程度なので5割は超えません。