2022年1月9日日曜日

バリアフリー新法

バリアフリー新法は,「障害者」と「高齢者」の2つの科目の出題基準に示されています。


しかし,実際に国家試験に出題されることはとても少ないものです。


2020年(令和2年)に改正されているので一応示しますが,第34回国試ではおそらく出題されません。変わってすぐ出題されるのは,本当にめったにありません。
















この中で,注目したいのは,市町村が策定する基本構想で「心のバリアフリー」に関する教育啓発特定事業を位置づけたことです。

これは,障害者基本法で示されている社会的障壁の除去に関連するものでしょう。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題128 「バリアフリー新法」に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 「バリアフリー新法」は,国や地方公共団体の責務に加え,「国民の責務」を定め,法の対象となる高齢者等の自立した日常生活・社会生活を確保することの重要性の理解と,円滑な移動・施設利用への協力を努力義務とした。

2 「バリアフリー新法」は,高齢者や障害者が移動のために車いす等の用具を使用したまま乗車できる車両(福祉タクシー)を,「交通バリアフリー法」に引き続き対象としている。

3 「バリアフリー新法」は,「高齢者,障害者等」として障害を身体障害に限らない表現となったが,実質的には円滑な移動に障害のある身体障害者のみが対象とされている。

4 「バリアフリー新法」では,都道府県が策定する「移動等円滑化基本構想」の作成に当事者である住民が参加したり,提案したりすることができるようになり,住民参加が前進した。

5 「バリアフリー新法」は,市町村の責務として,教育活動や広報活動を通じて移動等円滑化の促進に関する住民の理解を深め,住民の協力を求めることを規定している。

(注)1 「バリアフリー新法」とは,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」のことである。

2 「交通バリアフリー法」とは,「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」のことである。


もし,今後バリアフリー新法が出題されるとすると,こういった内容ではなく,改正されたポイントが中心になると思いますが,一応解説です。


1 「バリアフリー新法」は,国や地方公共団体の責務に加え,「国民の責務」を定め,法の対象となる高齢者等の自立した日常生活・社会生活を確保することの重要性の理解と,円滑な移動・施設利用への協力を努力義務とした。


これが正解です。


用語を解説すると,責務は,「責任と義務」という意味ですが,法律用語では,義務の意味合いでは使われません。


この問題にあるように,多くの場合,努力義務を指しています。つまり「〇〇するよう努めなければならない」という意味で使われるのが「責務」だということになります。


義務なのか,努力義務なのか,覚えるのが大変だと思う人もいることでしょう。


しかし,義務化されることは,インパクトのあることなので,それほど多くあるわけではありません。


2020年改正のポンチ絵の中にあるもので,義務となっているのは,


公共交通施設や建築物等のバリアフリー化の推進

ハード面の移動等円滑化基準の適合については、新設等は義務

ハード・ソフト取組計画の作成・取組状況の報告・公表義務

  (一定規模以上の公共交通事業者等) 


この2つしかありません。



2 「バリアフリー新法」は,高齢者や障害者が移動のために車いす等の用具を使用したまま乗車できる車両(福祉タクシー)を,「交通バリアフリー法」に引き続き対象としている。


福祉タクシーがもし交通バリアフリー法で既に規定されていたなら,出題する意義は低いと言えます。


新しく規定されたものだから,出題する意味があります。


ということで,福祉タクシーが期待されたのは,バリアフリー新法です。


出題意図を考える余裕があったなら,正解する可能性はかなり高まります。


3 「バリアフリー新法」は,「高齢者,障害者等」として障害を身体障害に限らない表現となったが,実質的には円滑な移動に障害のある身体障害者のみが対象とされている。


「のみ」は「すべて」と同じくらい正解になりにくいものです。


最近は,それを多くの人は知っているので極力使わないで問題が作られる傾向にあります。


バリアフリー新法は,身体障害に限らず,精神障害,知的障害も対象とします。


4 「バリアフリー新法」では,都道府県が策定する「移動等円滑化基本構想」の作成に当事者である住民が参加したり,提案したりすることができるようになり,住民参加が前進した。


移動等円滑化基本構想を策定するのは,都道府県ではなく,市町村です。


住民の生活実態を知るのは,市町村だからです。


5 「バリアフリー新法」は,市町村の責務として,教育活動や広報活動を通じて移動等円滑化の促進に関する住民の理解を深め,住民の協力を求めることを規定している。


これはちょっと考えてしまうものでしょう。


住民という言葉が入っているので,市町村の責務っぽいですが,広報などを行うのは,市町村の役割には基本的にありません。


うまく作られています。本当は,「住民」ではなく「国民」という文字が入ります。


国民なら,すぐわかりますね。つまり,これは国の責務を示したものです。


法では,以下のように規定されています。

国は、教育活動、広報活動等を通じて、移動等円滑化の促進に関する国民の理解を深めるとともに、高齢者、障害者等が公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援、これらの者の高齢者障害者等用施設等の円滑な利用を確保する上で必要となる適正な配慮その他の移動等円滑化の実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。


これも努力義務です。

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