2022年1月17日月曜日

障害者雇用促進法

障害雇用促進法が根拠となって設置されているのは,「障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」の2つです。

 

障害者職業センターは,障害者職業総合センター,広域障害者職業センター,地域障害者職業センターの3段階のセンターがありますが,国家試験で出題されるのは,このうちの地域障害者職業センターです。

 

地域障害者職業センターの業務 

・障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習。

・事業主に雇用されている知的障害者等に対する職場への適応に関する事項についての助言又は指導。

・事業主に対する障害者の雇用管理に関する事項についての助言その他の援助。

・職場適応援助者(ジョブコーチ)の養成及び研修。

・関係機関に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言その他の援助。

 

もう一つの障害者就業・生活支援センターも紹介します。

 

障害者就業・生活支援センターの業務 

<就業支援に関するもの>

・支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行う。

・関係機関との連絡調整その他の援助。

・支援対象障害者への職業準備訓練のあっせん。

 

<生活支援に関するもの>

・支援対象障害者の職業生活における自立を図るために必要な業務。

 

 

法制度で押さえておかなければならない大原則があります。

 

これは,どの領域にも共通するものです。

 

異なる機関が同じ業務を行わない

 

つまり,「□□の業務」を行うのは,「〇〇機関」である,ということです。

 

役所に電話すると,いろいろな部署に回されることがあります。「たらい回し」と言われることもありますが,その業務を行いたくないから,ほかの部署に回しているわけではなく,どの部署で対応すればよいかわからないためです。

 

対応すべき部署が明確なら,絶対にたらい回しはしません。

なぜなら,「□□の業務」について,最も詳しくて専門に行うのは「〇〇機関」だからです。

 

「□□の業務」を「〇〇機関」や「××機関」といったように複数の機関で共通して行うことは,通常考えられません。

 

この考え方をしっかり持っていないと思わぬ落とし穴にはまることもあるので注意が必要です。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題143 就労支援を行う機関に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 職業安定法で,公共職業安定所は,要保護者,低所得者を除く一般就労が可能な求職者を対象に業務を行うと規定されている。

2 社会福祉法で,社会福祉協議会は,生活福祉資金貸付制度の対象である低所得者について職業あっせんを行うと規定されている。

3 児童福祉法で,母子生活支援施設は,母子世帯を対象に職業あっせんを行うと規定されている。

4 「障害者雇用促進法」で,地域障害者職業センターは,身体障害者,知的障害者,精神障害者等を対象として業務を行うこととされている。

5 身体障害者福祉法で,身体障害者更生相談所は,業務範囲として,就労あっせんを行うと規定されている。

(注) 「障害者雇用促進法」とは,「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。

 

この問題の中で,あっせんに関するものは,以下の選択肢です。

 

2 社会福祉法で,社会福祉協議会は,生活福祉資金貸付制度の対象である低所得者について職業あっせんを行うと規定されている。

3 児童福祉法で,母子生活支援施設は,母子世帯を対象に職業あっせんを行うと規定されている。

5 身体障害者福祉法で,身体障害者更生相談所は,業務範囲として,就労あっせんを行うと規定されている。

 

職業あっせんを行う専門機関は,公共職業安定所(ハローワーク)です。

 

社会福祉協議会,母子生活支援施設,身体障害者更生相談所が,それぞれ対象が異なったとしても職業あっせんを行うことは,公共職業安定所の業務と重なってしまいます。

 

これは,制度として通常あり得ないことです。

 

制度は,それぞれの専門領域を明確にしているからです。

 

過去問では,

 

行政指導の範囲は,その行政機関の任務又は所掌事務に限られない。(第27回・問題79

 

といった出題がありますが,これもあり得ません。

 

さて,今日の問題の正解は,選択肢4です。

 

4 「障害者雇用促進法」で,地域障害者職業センターは,身体障害者,知的障害者,精神障害者等を対象として業務を行うこととされている。

 

落ち着いて考えると当たり前のものでしょう。

 

障害者雇用促進法の障害者の定義は,

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。

とされています。

 

そのため,業務の対象は「身体障害者,知的障害者,精神障害者等」ということになります。

 

1 職業安定法で,公共職業安定所は,要保護者,低所得者を除く一般就労が可能な求職者を対象に業務を行うと規定されている。

 

公共職業安定所は,求職の申込みのあるものについて,原則としてすべて受理することになっています。

 

つまり,対象を絞って業務を行うわけではありません。

 

余談ですが,もしこの選択肢が正解なら,

2 社会福祉法で,社会福祉協議会は,生活福祉資金貸付制度の対象である低所得者について職業あっせんを行うと規定されている。

 

も正解になってしまいそうです。

しかし,正解は一つしかないので,どちらも×だということになります。

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