生活保護法による介護扶助は,介護保険と同時に創設されたものです。
介護保険は,被保険者の保険事故に対して,保険給付を行う制度です。
介護保険の被保険者を復習してみると,
第一号被保険者:65歳以上の者
第二号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者
まず,第一号被保険者です。
何の条件もないので,65歳になると第一号被保険者となります。
サービス利用料の1割の自己負担分が介護給付として給付されます。
残りの9割が介護保険から給付されます。
次は,第二号被保険者です。
第二号被保険者は,医療保険加入者という要件があります。
国民健康保険の第一号被保険者が生活保護を受給すると,保険証を返還しなければなりません。
医療を受ける場合は,医療保険制度を利用するのではなく,医療扶助が給付されます。
医療保険に加入していない被保護者の場合,介護保険の第二号被保険者にはなれません。
介護保険サービスを利用する場合,当然保険給付はされません。
そのため,介護保険サービスの利用料を介護扶助がカバーすることとなります。
つまり介護保険サービスの利用料すべて介護扶助が適用されます。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題123 事例を読んで,Bさんの介護保険サービス利用と生活保護との関係に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
〔事例〕
Bさん(64歳,男性)は,病弱のため働くことができず,年金など他の収入も全くないため,5年前から生活保護を受けて暮らしており,医療扶助も受けてきた。1年ほど前からは持病の関節リウマチが悪化し,一層心身機能が低下してきたため,福祉事務所の担当ケースワーカーと相談して要介護認定を受け,要介護1と認定されて,訪問介護サービスを利用している。Bさんの誕生日は来月で,もうすぐ65歳になる。
1 Bさんへの介護給付は,9割は介護保険で,1割は介護扶助で行われている。
2 Bさんが65歳から納付する介護保険料分は,その額が生活扶助費に加算される。
3 Bさんが患う関節リウマチは,生活保護法上の特定疾病である。
4 Bさんは,65歳以後,介護サービス費の1割を生活扶助費から負担しなければならない。
5 Bさんが要介護認定を受けたことに伴い,医療扶助は介護扶助に切り替わった。
介護保険に関する事例問題の場合,特に気をつけることが必要なのは,「年齢」です。
65歳以上なのか
65歳未満なのか
これによって大きく異なるからです。
Bさんは,現在64歳です。また,医療扶助を受給しているという情報から,医療保険の被保険者ではないことがわかります。
そのため,介護保険の第二号被保険者ではないということになります。
それでは,解説です。
1 Bさんへの介護給付は,9割は介護保険で,1割は介護扶助で行われている。
Bさんが,65歳になると介護保険の第一号被保険者となるため,この選択肢は正しいことになります。
しかし,Bさんは64歳です。第二号被保険者ではありません。
そのため,介護保険の保険給付はされません。
そのため,介護保険サービスの利用料すべてが介護扶助で賄われます。
2 Bさんが65歳から納付する介護保険料分は,その額が生活扶助費に加算される。
前説では,書きませんでしたが,これが正解です。
被保護者であっても,65歳になると,介護保険の第一号被保険者となります。
そのため,介護保険料を納付しなければなりません。
被保護者だからといって免除されるわけではありません。
介護保険料は,生活保護の生活扶助の介護保険料加算が加算されて,それで介護保険料を納付する仕組みとなっています。
第一号被保険者の介護保険料は,介護扶助が対応するものではないことに注意が必要です。
3 Bさんが患う関節リウマチは,生活保護法上の特定疾病である。
関節リウマチは,生活保護上の特定疾病ではなく,介護保険上の特定疾病です。
社会福祉士の国家試験は,このように根拠法を変えて出題すされることがよくあります。
選択肢の文章の中に,法律名が含まれていた場合は,そこに気を付けることが大切です。
4 Bさんは,65歳以後,介護サービス費の1割を生活扶助費から負担しなければならない。
先述のように,介護保険サービスを利用した分,自己負担が生じますが,これに対応するのは,介護扶助です。
生活扶助が対応するのは,介護保険料です。
5 Bさんが要介護認定を受けたことに伴い,医療扶助は介護扶助に切り替わった。
医療扶助は,医療ニーズに対応するものです。
介護扶助は,介護ニーズに対応するものです。
医療を受ける場合は,要介護認定を受けようが受けまいが変わらず,医療扶助が対応します。