更生緊急保護は,保護観察に付されていない者に対して実施する緊急的な保護です。
〈保護内容〉
・金品の給与,又は貸与。
・宿泊場所の供与。
・医療、療養、就職,教養訓練の援護。
・職業の補導。
・生活環境の改善又は調整 など
〈期間〉
6か月を超えない範囲内。必要な場合はさらに6か月を超えない範囲で延長することができる。
〈保護の実施者〉
保護観察所の長が自ら行う,あるいは適当な者に委託して行う。
〈保護の開始〉
対象となる者からの申し出があり,保護観察所の長が必要だと認めた場合に,保護を実施する。
国家試験で問われるのは,こんなところです。
更生緊急保護が保護観察に付されていない者を対象としないのは,保護観察に付されていない者には,以下のように「応急の救護」という更生緊急保護と同等の制度があるからです。
保護観察に付されている者 |
応急の救護 |
保護観察に付されていない者 |
更生緊急保護 |
それでは今日の問題です。
第22回・問題149 更生緊急保護に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 更生緊急保護は,保護観察所長が自ら行い,又は更生保護法人やその他の適当な者に委託して行う。
2 更生緊急保護は,その対象となる者が刑事上の手続き又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行うものとされている。
3 少年院から退院した者,又は仮退院を許され保護観察に付されている者は,更生緊急保護の対象となる。
4 更生緊急保護は,対象となる要件を備えた者についてその再犯を予防するために必要があると検察官が認めたときに限り,行うものとされている。
5 更生緊急保護の対象となる者が,専門学校進学のための十分な資金を持たない場合,更生緊急保護で給与することができる。
この問題は,平成19年のカリキュラム改正があった後,初めての国試で出題されたものです。
これまで第22回国試に着目して取り上げてきた理由は,第22回国試の出題内容は,その後の国試をどのように出題していくかを示したものだからです。
つまり第22回国試の問題をベースにして,その後の問題が出題されてきたと言ってもよいでしょう。
今となっては,第22回国試問題を見てもそれほど難しく感じませんが,その試験を受験した人にとって,とてつもなく難しく感じたと思います。
過去問がなかったからです。その頃のことを考えると,今はやる気と根気があれば,その当時よりもかなり確実に合格することも可能です。
近年,合格基準点が上がってきているのは,勉強しやすくなっているからだと言えます。
それでは,今日の問題の解説です。
1 更生緊急保護は,保護観察所長が自ら行い,又は更生保護法人やその他の適当な者に委託して行う。
これが正解です。
2 更生緊急保護は,その対象となる者が刑事上の手続き又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行うものとされている。
更生緊急保護の期間は,6か月を超えない範囲内で行います。必要な場合は,さらに6か月を超えない範囲で,延長することができます。
3 少年院から退院した者,又は仮退院を許され保護観察に付されている者は,更生緊急保護の対象となる。
保護観察に付されている者は,更生緊急保護ではなく,応急の救護の対象となります。
これが,更生緊急保護は保護観察に付されている者を対象としない制度である理由です。
4 更生緊急保護は,対象となる要件を備えた者についてその再犯を予防するために必要があると検察官が認めたときに限り,行うものとされている。
更生緊急保護は,対象となる者からの申し出があり,保護観察所の長が必要だと認めた場合に,保護を実施します。
5 更生緊急保護の対象となる者が,専門学校進学のための十分な資金を持たない場合,更生緊急保護で給与することができる。
更生緊急保護では,金品の給与もありますが,それは,生活するために必要なお金です。
専門学校進学のお金が必要なら,働いてその資金を貯めなさい,ということになることでしょう。