第22回国家試験は,平成19年度カリキュラム改正の第1回のものです。
令和元年改正と異なり,移行が急だったこともあり,どのような問題を出題するのかを事前に示すことができた試験は,第21回国試のみでした。
そのため,第22回国試は,「これからこんな問題を出題しますよ。皆さんしっかり覚えておいてくださいね」という挨拶替わりとなっています。
つまり,この国試問題がベースとなり,現在まで国家試験が続いてきたということになります。
今見ても,問題が古臭く感じないのは,そういったことも要因の一つでしょう。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題122 歩行に介助の必要な高齢者の住環境に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 滑りやすい床面に,摩擦が大きなじゅうたんやマットを,その一部に敷くようにする。
2 廊下に手すりを取り付ける場合,平たい形状のものにし,高齢者の肩の高さに設置すると姿勢よく歩きやすい。
3 冬季においては,移動時には厚めの衣類を着用するので,居室と廊下,トイレ等の温度差に注意する必要はない。
4 寝室が2階で1階に浴室や居間がある場合,廃用性萎縮を防ぐため,階段を一人で昇降するよう勧める。
5 加齢により色覚が変化するため,日常生活空間では,青・緑より視覚的に見やすい赤・黄といった系統の色を使用するとよい。
この問題も旧・介護概論の流れをくむものです。
この問題の正解は,選択肢5です。
現時点(2022年1月)における直近の国試である第33回国試では,以下のように出題されています。
第33回・問題130 要介護高齢者の住環境整備に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 階段は,ステップの面と高さの色彩コントラストをはっきりさせる。
2 床の滑り止めを極力強化することで,転倒を防止する。
3 手指に拘縮がある場合,握り式のドアノブにする。
4 車いす利用の場合,有効な廊下幅は550mm以上である。
5 ポータブルトイレの設置は,ベッドからできるだけ遠ざける。
この問題の正解は,選択肢1です。
第22回と第33回の問題は,いずれも視覚に関するものが正解になっていることが注意ポイントです。
色彩ははっきりさせることが重要であることがよくわかりますね。
まず,第22回の問題の解説です。
1 滑りやすい床面に,摩擦が大きなじゅうたんやマットを,その一部に敷くようにする。
じゅうたんやマットは,滑りにくいはそのとおりですが,摩擦が大きすぎるとつまずく要因となります。
バスケットシューズでバスケットをする場合,足腰の筋力がなければ,キュッと止まると,ひざから崩れます。
高齢者の場合も同じです。
2 廊下に手すりを取り付ける場合,平たい形状のものにし,高齢者の肩の高さに設置すると姿勢よく歩きやすい。
バレエの場合は,高い位置に手すりがあるかもしれませんが,そんなに高いと手すりにぶら下がったような状態になってしまいます。
多分満足に歩くことができないでしょう。手すりは杖のように体重をかけることで,体のバランスが取れます。
わからなくなったら,頭の中でイメージとてみることが大切です。
3 冬季においては,移動時には厚めの衣類を着用するので,居室と廊下,トイレ等の温度差に注意する必要はない。
温度差は,極めて危険です。
温度差がなくなるように環境を整備することが大切です。
廃用性委縮を防ぐことは大切ですが,階段を一人で昇降するのは危険です。
廃用性委縮を防ぐなら,つかまり立ちや伝い歩きなど日常動作の中でも可能です。
大きな空間よりもユニットケアのような小さな空間のほうが適切なのは,伝い歩きなどができるからです。
ちょっとした空間にいろいろなものがあると,それが可能となります。
5 加齢により色覚が変化するため,日常生活空間では,青・緑より視覚的に見やすい赤・黄といった系統の色を使用するとよい。
先述のようにこれが正解です。
次に,第33回の問題の解説です。
1 階段は,ステップの面と高さの色彩コントラストをはっきりさせる。
これが正解です。
2 床の滑り止めを極力強化することで,転倒を防止する。
第22回問題で述べたように,床が完全に滑らなくなると,つまずく要因となります。
3 手指に拘縮がある場合,握り式のドアノブにする。
これは,第22回にはなかったものですが,ドアノブは旧・介護概論の時から何度も出題されてきた定番に近いものです。
ドアノブは,握り式よりもレバー式のほうが使いやすいです。
そのため,新しい家では,レバー式のほうが多いと思います。つまり,レバー式は,ユニバーサルデザインであると言えます。
4 車いす利用の場合,有効な廊下幅は550mm以上である。
標準的な車いすの幅はよくわかりませんが,550mmは,体の幅よりも二回りくらい広いだけです。
そんな狭い廊下は見たことがありません。そこで調べてみると,1,200mm以上が推奨されていました。
それを知らなくても,550mmは狭すぎるという感性があれば十分です。
5 ポータブルトイレの設置は,ベッドからできるだけ遠ざける。
これは知らなくても正解には,絶対になりません。
「できるだけ遠ざける」が適切であれば,居室から遠く離れた,廊下の端っこに置いても適切になってしまいます。
そんなばかな話はありません。近い方が良いに決まっています。
リハビリ効果を考えれば,遠くのほうがよい,と思う人もいるかもしれません。
もし,部屋の遠くまで歩くことが可能なら,トイレまで誘導すれば,ポータブルトイレを使わなくても良いことになります。
もう一つ間違っているのは,トイレもリハビリテーション効果はありますが,トイレに行きたいのに離して置くのは,ご利用者の尊厳を侵害した行為だと言えます。
リハビリテーションは,別の場面でも行うことができます。