2021年12月1日水曜日

事例問題はどのように解く?

事例問題には2種類があります。


①対人援助系

②制度系


「②制度系」の事例問題なのに,「①対人援助系」の問題だと思って解くと痛い目に遭います。


「①対人援助系」の問題は,知識ゼロでも正解できます。


ということは,勉強不足の人でも正解できます。


つまり,みんなが正解できる問題である可能性が高いので,そこでミスすることは,自滅の道を歩むことになります。


絶対にミスしないためには,クライエント中心の視点をしっかり持つことです。



もう一度言います。


絶対にミスしないためには,クライエント中心の視点をしっかり持つことです。


援助者の視点で物事を考えるとミスすることになるので,くれぐれも注意が必要です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題90 事例を読んで,Dさんに対するE家庭支援専門相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事 例〕

 小学1年のC子(7歳,女児)は,父親の死亡後,母親のDさん(33歳)から身体的虐待とネグレクトを受けていた。5歳のときから児童養護施設で生活している。Dさんはアルコール依存症で入退院を繰り返し,生活が不安定であった。1か月ほど前から,自宅療養中のDさんが「C子を返してくれ」と言い出した。E専門相談員が訪問すると,家の中はごみが散乱し,Dさん自身も食事が十分とれていない状態であった。Dさんは「お酒はやめている。一人暮らしをしているとさみしくて,誰かにそばにいてほしい。子どもと一緒に暮らしたい」と強く訴えた。

1 「C子ちゃんの引取りは今後とも無理だと思う」と伝える。

2 「引取りの気持ちが強いようなので,C子ちゃんに帰るように許しておきます」と伝える。

3 「お母さんのお気持ちはよく分かります。これから話し合っていきましょう」と伝える。

4 「C子ちゃんに一緒に暮らすかどうか決めてもらいましょう」と伝える。 

5 「守秘義務があるので,あなたの要望は居室担当の職員にも話しません」と伝える。


E家庭支援専門相談員にとってのクライエントは,C子ちゃんです。


家族も支援対象であることを忘れてはなりません。


なに,馬鹿なことを言う? そんなことはない!


と思う人は,要注意です。


国試会場は,緊張で包まれています。


この中で冷静に問題を読むのは,かなり難しいことです。


普段は起きないことが起きるのが国家試験です。


そのため,絶対に忘れてはならない視点は,いつも強く意識することが必要です。


この問題で迷うのは,選択肢5でしょう。


5 「守秘義務があるので,あなたの要望は居室担当の職員にも話しません」と伝える。


守秘義務,つまり秘密保持義務は,社会福祉士の責務の一つです。


クライエントが話したことをペラペラしゃべるようなワーカーは,秘密保持義務がなくても,信用できないものです。


しかし,秘密保持義務には,例外があります。


・法令で定められている場合

・クライエントの同意がある場合

・生命の安全が守られない恐れがある場合


そのほかに忘れてはならないのが,支援チームでの情報の共有です。


あなたの要望は居室担当の職員にも話しません。


一見正しそうに思うかもしれません。


しかし,もしDさんが,「子どもと一緒に暮らすことをじゃまする者は殺してやる」と言ったらどうなるのでしょうか。


もし,そのことをEさんが知っているのに,ほかの職員に言わず,そのために,職員が本当に殺されて,Eさんに対して訴訟が提起されたら,おそらくEさんは負けます。


人間関係を壊したくなくて,安請け合いすることは絶対に避けなければなりません。


Dさんのお気持ちはよくわかりました。C子ちゃんの担当の職員には,Dさんがどのように考えているのかを伝えたいと思います。そのうえで,C子ちゃんにとってもDさんにとってもより良い方法をみんなで考えていきませんか。


こんな感じなら,どうでしょうか。


この内容と同じようなものは,選択肢3です。


3 「お母さんのお気持ちはよく分かります。これから話し合っていきましょう」と伝える。


Dさんを受容したうえで,その次の可能性を示しています。


ということでこれが正解です。


4 「C子ちゃんに一緒に暮らすかどうか決めてもらいましょう」と伝える。


これは専門職として,責任の放棄です。


家族統合は,そんなに簡単にできるものではありませんし,そのジャッジをするのは,C児童ちゃんでもDさんでもなく,児童相談所です。

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