国家試験で出題される様々なアプローチは,12種類です。
・心理社会的アプローチ
「状況の中の人」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わっていく。
・機能的アプローチ
ワーカーの所属する機関の機能を活用して,クライエントの意志で問題解決できるように援助する。
・問題解決アプローチ
クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する。
・課題中心アプローチ
クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。
・危機介入アプローチ
危機状態に陥っている人に対して早期にかかわり,危機に対して対処能力を高める。
・行動変容アプローチ
学習理論を活用して,クライエントの問題となる行動を消去や強化することにより,問題行動全体の変容を図る。
・エンパワメントアプローチ
クライエントが抑圧された状況を認識して,潜在能力に気づいて,対処能力を高められるようにかかわる。
・ナラティブアプローチ
クライエントが語るストーリーを重視して,新たな意味の世界を創り出すことを援助する。
・解決志向アプローチ
クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。
・フェミニストアプローチ
女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。
・実存主義アプローチ
利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。
・エコロジカルアプローチ
「人と環境」の交互作用に着目して援助する。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題92 ソーシャルワークのアプローチと焦点を当てるべき事象の組み合わせに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 心理社会的アプローチにおいては,急性の感情的な混乱状態にある利用者の対処能力の強化,社会的機能の回復に焦点を当てる。
2 問題解決アプローチにおいては,利用者自らがもっている具体的な解決イメージを重視し,問題が解決した状態を短期間で実現することに焦点を当てる。
3 課題中心アプローチにおいては,利用者のニーズを機関の機能との関係で明確化し,その機能を個別化して提供することに焦点を当てる。
4 機能的アプローチにおいては,利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。
5 エンパワメントアプローチにおいては,利用者が自らの置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することに焦点を当てる。
抑圧というキーワードは,フェミニストアプローチとエンパワメントアプローチの2つにありました。
エンパワメントアプローチの女性版がフェミニストアプローチだととらえると良いと思います。
それでは,解説です。
1 心理社会的アプローチにおいては,急性の感情的な混乱状態にある利用者の対処能力の強化,社会的機能の回復に焦点を当てる。
対処能力がキーワードなのは,危機介入アプローチです。
2 問題解決アプローチにおいては,利用者自らがもっている具体的な解決イメージを重視し,問題が解決した状態を短期間で実現することに焦点を当てる。
解決イメージがキーワードになっているのは,解決志向アプローチです。
3 課題中心アプローチにおいては,利用者のニーズを機関の機能との関係で明確化し,その機能を個別化して提供することに焦点を当てる。
機能がキーワードになっているのは,機能的アプローチです。
4 機能的アプローチにおいては,利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。
疎外状態がキーワードになっているのは,実存主義アプローチです。
5 エンパワメントアプローチにおいては,利用者が自らの置かれている否定的な抑圧状況を認識し,自らの能力に気付き,その能力を高め,問題に対処することに焦点を当てる。
抑圧がキーワードになっているのは,エンパワメントアプローチとフェミニストアプローチです。
この選択肢には女性の要素が含まれていないので,エンパワメントアプローチだということになります。
つまり,この選択肢が正解です。
<今日の一言>
様々なアプローチは面倒な感じがすると思いますが,今日の問題のようにポイントを押さえると正解しやすいものです。
なぜなら,出題ポイントはいつもあまり変わらないからです。