社会福祉士の国家試験では,相談援助の過程に関連する事例問題が多く出題されていますが,そのうち,初回面接,インテークのものが圧倒的に多くなっています。
その理由は,初回面接は,2回目,3回目とは違ってとても重要なものだからです。ソーシャルワーカーも緊張するかもしれませんが,クライエントはもっと緊張します。
クライエントは,担当ワーカーが信用できる人かどうかをシビアに査定しています。インテークはラポール形成が重要だと言われるのは,こういうところからきています。
ワーカーがクライエントに質問したら答えてくれるものだと思っていたら大間違いです。
信用できない人に心を開いて話してくれるわけがありません。
国試問題は,初回面接の重要性を教えてくれています。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題96 事例を読んで,母子生活支援施設の母子指導員(社会福祉士)の発言に関する次の記述のうち,自立支援計画作成のための初回面接における最初の発言として,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
Dさん(22歳)は,毎日のように繰り返される夫の暴力に疲れ果て,逃げ出す気力もなかったが,友人から婦人相談所のことを聞き,夫の留守に子ども(2歳)を連れ,身の回りの物だけを持って緊急一時保護を受けた。その後福祉事務所へ相談に行き,母子生活支援施設に入所することになった。入所初日に,母子指導員が面接を行った。面接室に入ってきたDさんは不安な様子で,言葉少なげだった。
1 とてもつらそうですね。でも,つらいのはあなただけではありませんよ。
2 不安なのは分かりますが,子どもさんのために頑張らないといけませんね。
3 施設に入られるのですから,どうか私たちにお任せください。
4 お気持ちや今後の生活などについて話し合っていきましょう。
5 まず,あなたが受けていた暴力の内容について具体的に詳しくお話しください。
この問題は,事例を読まなくても正解できそうです。
そういった意味では,良い問題ではないのでしょう。
正解は,選択肢4です。
4 お気持ちや今後の生活などについて話し合っていきましょう。
クライエントは,ワーカーが何をしてくれる存在なのかわかりません。
そのワーカーが「お気持ちや今後の生活などについて話し合っていきましょう」と言ってくれたら,どうでしょうか。
一緒にいろいろなことを考えてくれるのだ,ということをクライエントがわかるのではないでしょうか。
Dさんは,不安な様子だ,と述べられています。
そのDさんに対して,以下の言葉は辛く響くことでしょう。
2 不安なのは分かりますが,子どもさんのために頑張らないといけませんね。
こんなことを本気で言うワーカーは,ワーカー失格です。