キャリアは,仕事の経歴といった意味で使われることが多いと思います。
しかし,本来のキャリアは,仕事に関するものだけではありません。
そのために,近年では,キャリア・レインボーという用語が使われるようになってきています。
レインボーの7色になぞらえて,人のキャリアは,仕事面だけではなく,人生の中でのさまざまな経歴を表現したものが,キャリア・レインボーです。
社会福祉士の国試にはまだ出題されたことがありませんが,多様な生き方が目指される中,ぜひ覚えておきたいものです。
社会福祉士の国試に出題されるキャリアがつく用語は結構多いです。
そのうち,わかりにくいのは,キャリア・アンカーとキャリア・プラトーでしょう。
キャリア・アンカーのアンカーは錨(いかり)を意味しています。
転職する際などで,自分が最も大切にしたいキャリアの中心だと言えるでしょう。錨があるから船は安定して停まっていられます。
キャリア・プラトーのプラトーは,高原状態を意味しています。
キャリア・プラトーは,高原状態になぞらえて,キャリアが頭打ちになることをいいます。
わかりやすい例で言えば,ある程度キャリアを積み重ねると,組織での役職もそれ以上上がらず,給料も頭打ちとなります。
これがキャリア・プラトーの状態です。
こういった状態になると,転職や起業を考える人もいるでしょう。
大きな組織だと,先輩を見ることで,どんなキャリアになるかが見えるからかもしれません。
しかし,どんなものにも頭打ち状態はあります。そこで限界を感じるのか,それ以上努力するかは,その人の生き方次第だと言えるでしょう。
国試勉強も同じです。勉強を始めた最初は,知識が増えていくので,問題がどんどん解けるようになっていきます。
しかし,ある程度のところまで来ると,点数は伸びなくなります。
これも高原状態です。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題116 福祉サービス提供組織における人材の確保と育成,労務管理に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい 。
1 「新人材確保指針」は,福祉・介護サービス分野に従事する人材の確保のために,労働環境の整備の促進,キャリアアップの仕組みの構築,潜在的な有資格者等の参入の促進等の方策を示したものである。
2 就業規則を作成することが義務づけられている事業所においては,就業規則の作成又は変更に当たっては,労働者の過半数を代表する者の同意を得ることが法律上の要件とされている。
3 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については,教育訓練や福利厚生を通常の労働者と同じにする必要はない。
4 個人のキャリアとは,専門性の向上や専門資格の取得を指すものではなく,例えば定年まで勤務し,その中で役職が昇進していくという組織内ポストの上昇を指すものである。
5 軽度かつ短時間の作業に当たる宿直業務について,労働基準監督署長の許可を受けていなくとも,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよい。
(注) 「新人材確保指針」とは,「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成19年厚生労働省告示約289号)のことである。
難易度が高い問題ですが,もうこんな感じの問題は出題されないでしょう。
この問題の難易度が高いのは,選択肢1が正解だからです。
1 「新人材確保指針」は,福祉・介護サービス分野に従事する人材の確保のために,労働環境の整備の促進,キャリアアップの仕組みの構築,潜在的な有資格者等の参入の促進等の方策を示したものである。
2007年に出された指針が,2020年代になってもまだ出題されることはないと思います。
それでは,ほかの選択肢を見ていきたいと思います。
2 就業規則を作成することが義務づけられている事業所においては,就業規則の作成又は変更に当たっては,労働者の過半数を代表する者の同意を得ることが法律上の要件とされている。
就業規則の作成又は変更に当たっては,労働基準法で以下のように規定されます。
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
3 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については,教育訓練や福利厚生を通常の労働者と同じにする必要はない。
これは,今も出題される可能性があります。
同一労働・同一賃金の制度が導入されているからです。
4 個人のキャリアとは,専門性の向上や専門資格の取得を指すものではなく,例えば定年まで勤務し,その中で役職が昇進していくという組織内ポストの上昇を指すものである。
前説で述べたように,キャリアは仕事上の意味合いで使われることが多いですが,本来はそれにとどまりません。
多くのキャリアが存在します。その中には,もちろん専門性の向上や専門資格の取得を目指すものもあるでしょう。
また,仕事を離れて,家庭の仕事をする,子育てをする,趣味の仲間と交流する,定年後も新しい資格取得を目指す,こういったこともすべてキャリアです。
キャリア・レインボーとは,なかなか素敵なネーミングです。
5 軽度かつ短時間の作業に当たる宿直業務について,労働基準監督署長の許可を受けていなくとも,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよい。
宿直は,仕事があまりない職場の宿直だとしても,家で過ごしているわけではありません。
そこから消去することはできるでしょう。
それよりもこの問題でびっくりなのは,労働基準監督署長の許可を受けている場合は,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよいという規定があることです。
どのように算定するのか知りませんが,ちょっと辛そうです。