ソーシャルワークの面接技法はさまざまあります。
第22回以降では,以下のような出題があります。
第22回(事例) |
・直視 ・要約 ・感情の反映 ・助言・提案 ・自己開示 |
第23回 |
・繰り返し ・沈黙 ・言い換え ・相づち ・閉じられた質問 |
第27回 |
・閉じられた質問 ・言い換え ・明確化 ・要約 ・アイメッセージ |
第29回 |
・閉ざされた質問 ・要約 ・感情の反映 ・沈黙 ・非言語的な表現 |
第30回(事例) |
・開かれた質問 ・直面化 ・自己開示 ・対決 ・感情の反映 |
第32回 |
・言い換え ・共感 ・ミラクルクエスチョン ・アイメッセージ ・閉じられた質問 |
第33回 |
・明確化 ・閉じられた質問 ・支持 ・開かれた質問 ・要約 |
今回は,面接技法の問題ではないですが,言い換えを使った事例問題です。
第22回・問題93 事例を読んで,母親の発言へのA家庭相談員(社会福祉士)の応答に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
W家庭児童相談室に,2歳の子どもを連れた母親(30歳)が来所した。A家庭相談員は,子どもを別室で遊ばせながら,母親とのインテーク面接を開始した。母親はいすに座ったとたん,堰を切ったように,「子どもが言うことを聞かないと,思わず叩いてしまうのです。我慢しようと思ってもできなくて,もうどうしたらいいのか分からなくて・・・」と話した。
1 お母さんの子どもの頃の話を聞かせていただけませんか。親から叩かれることがあったのですね。
2 お子さんへの行為は虐待に当たりますね。すぐにやめた方がいいと思いますよ。
3 失礼ですが,ご夫婦の関係はいかがでしょうか。夫婦の関係は子育てに影響すると思います。
4 子育てのことで悩んでおられるのですね。気持ちを抑えきれずに,お子さんを叩いてしまうのですね。
5 お子さんがかわいそうですね。親として,子どもの気持ちを分かってあげられるように努力しましょう。
この事例を逐語記録のように記述すると以下のようになります。
CL:子どもが言うことを聞かないと,思わず叩いてしまうのです。
我慢しようと思ってもできなくて,もうどうしたらいいのか分からなくて・・・
SW:子育てのことで悩んでおられるのですね。
気持ちを抑えきれずに,お子さんを叩いてしまうのですね。
お母さんを受容し,言葉を言い換えて,返しています。
これが言い換えの技法です。
ということで,正解は4です。
言い換えには,ポジティブに言い換える方法もあります。
それは,リフレーミングといいます。
ワーカーの返しをリフレーミング的に書いてみます。
SW:お子さんのことを叩いてしまうのは,お子さんのことを大事に真剣に育てようと思っているからなのですね。
子どもを叩いてしまうことをよくないと思いながら,叩いてしまう衝動を「大事に真剣に育てようと思っている」とポジティブな表現にして,言い換えています。
一応,ほかの選択肢も確認します。
1 お母さんの子どもの頃の話を聞かせていただけませんか。親から叩かれることがあったのですね。
これは,おそらく心理社会的アプローチの技法である「発達的な反省」に関連したものでしょう。
しかし,「親から叩かれることがあったのですね」と返すのは,極めて不適切でしょう。
確かに虐待されて育った人は子に対しても虐待する傾向にはあるらしいです。
しかし,それは一般的な話です。
このお母さんがそうだったとは限りません。
2 お子さんへの行為は虐待に当たりますね。すぐにやめた方がいいと思いますよ。
これは,非審判的態度の原則に反して,審判的態度になっています。
3 失礼ですが,ご夫婦の関係はいかがでしょうか。夫婦の関係は子育てに影響すると思います。
はい,まことに失礼です。
知らない人になぜ夫婦の話をしなければならないのでしょうか。
5 お子さんがかわいそうですね。親として,子どもの気持ちを分かってあげられるように努力しましょう。
これも審判的態度になってしまっています。
<今日の一言>
今日の問題は,正解するのは全然難しくありません。
しかし,それは今だからです。
国家試験会場では,思いもよらぬことが起きます。
こんな問題さえ間違う恐れがあるのです。
国試会場で実力通りの力を発揮することは,ことのほか難しいものです。