今回は,CS(Customer Satisfaction=顧客満足)とES(Employee Satisfaction=従業員満足)を取り上げます。
CSを上げるには,ESを上げることが必要です。
ESが上がるとCSが上がり,CSが上がるとESが上がります。
このような好循環が生まれます。
CSを高めても,ESをないがしろにするような組織は,おそらく長続きしないでしょう。
それでは今日の問題です。
第22回・問題117 サービス・マネジメントに関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 ドナベディアン(Donabedian,A.)によれば,ヘルスケアの質は「結果」(outcome)で評価されるものである。
2 サービスの消費者が知覚するサービスの質は,何が提供されたのかではなく,どのようにして提供されたのかによって評価される。
3 デミング(Deming,W.E.)らが提唱した統計的品質管理手法は,製造業の品質管理に使われるものであり,サービスの品質管理に使うことはできないとされる。
4 サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えることは,優れたサービスを提供することにつながるとされる。
5 サービス・デリバリー・システムという考え方によれば,サービスの水準はサービス従事者とサービスの消費者との二者間の関係によって決まる。
何,これ? と思うような問題です。
しかし,迷わなければ,正解にたどり着けるはずです。
別な言い方をすれば,迷うと正解にたどり着くことはできません。
答えは,今ならすぐわかりますね?
4 サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えることは,優れたサービスを提供することにつながるとされる。
なぜこの選択肢が正解なるのかと言えば,
サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えること → ESアップ
ESが上がると「優れたサービスを提供する」,その結果,CSが上がる
こういったプロセスとなります。
ほかの選択肢も見てみます。
1 ドナベディアン(Donabedian,A.)によれば,ヘルスケアの質は「結果」(outcome)で評価されるものである。
結果は重要でしょう。
例えば,医療では,手術の成功が大切です。
しかし,患者に評価されるのは,結果だけではなく,どのように医療が提供されたか,ということもあるでしょう。
ドナベディアンが示したヘルスケアの質は
・構造
・過程
・結果
で評価されます。
構造は,配置された職員数などです。
職員数が多いからといって,質の高いサービスが提供されるかどうかはわかりませんが,少なくとも必要数に足りないような職員数では,満足なサービスの提供はできないでしょう。
過程は,サービスの提供の過程のことです。
つまり,どのように提供されたのか,が過程です。
結果が良くても,乱暴な物の言い方をするようなサービスの提供では評価は低くなります。
結果は,どのような成果があったか,です。
結果は問題文にあったように,サービスの提供には,極めて重要な要素です。
2 サービスの消費者が知覚するサービスの質は,何が提供されたのかではなく,どのようにして提供されたのかによって評価される。
サービスの質の評価は
・サービスの内容
・サービスの提供の仕方
の両方が関連します。
3 デミング(Deming,W.E.)らが提唱した統計的品質管理手法は,製造業の品質管理に使われるものであり,サービスの品質管理に使うことはできないとされる。
デミングらが提唱した統計的品質管理手法とは,PDCAサイクルのことです。
PDCAサイクルの詳しいことは,調べておいてほしいですが,サービスの品質管理にも用いられます。
5 サービス・デリバリー・システムという考え方によれば,サービスの水準はサービス従事者とサービスの消費者との二者間の関係によって決まる。
サービス・デリバリー・システムが最もよくわからないものでしょう。
おそらくもう出題されないように思いますが,簡単に言えば,サービスの提供するための仕組みだと言えるでしょう。
ネットで調べると,最も上位に表示されるのは,大阪市立大学 名誉教授の白澤政和先生の記事です。
このように一般的によく知られていないものが出題されても,正解になることはめったにあることではないので,決して慌てないことが重要です。
サービス・デリバリー・システムは,サービスを提供するための仕組みだとすれば,制度設計なども関係するでしょう。