歴史と人名は苦手とする人は多いですが,歴史も人名も法制度のようには変わらないので,古い過去問もそのまま使えます。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題49 日本の社会保障の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。
2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。
3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。
4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。
5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。
私たちチームfukufuku21にとって,第29回国家試験はつい最近の感じがしますが,今となっては,ずいぶん昔となりました。
簡単に入手するのは困難ではないかと思うほどの昔の問題です。
参考書は,国家試験に出題されたものを参考にして作られるので,参考書に書かれているものの多くは,直近3年間の出題はなくても,過去のいつかの時点で出題されたものだと言えます。
しかし,国家試験に出題されたものであっても,もう出題されることはないだろうというものもあります。
国家試験は,5つの選択肢がなければ成立しません。しかも,正解以外は,誤りのものです。
今日の問題には,そういったものはありませんが,問題の中には,数合わせで出題するようなものがあります。
国家試験をみるとそういったものがよくわかりますが,参考書だけをみるとそれがわかりにくいので,すべてが重要だと思ってしまいます。
本当は,多くの人が思っているほど,国家試験は複雑でも高度でもありません。
覚えるべきものを確実に覚えると点数は伸びます。
それでは解説です。
1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。
これが正解です。
健康保険法がわが国の社会保険立法の最初のものなので,当然これが正解になります。
どの社会保険制度と比べても,健康保険法が最も先になります。
単純ですね。
2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。
選択肢1と関連しますが,健康保険法が先です。
3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。
今の大学生は,介護保険法が導入された後に生まれた人たちです。
社会福祉士の国家試験は,社会人も数多く受験しますが,社会人の合格率は,大学生一般よりも高いことに気づいている人は実はそれほど多くないようです。
国家試験を実施する社会福祉振興・試験センターは,年代別の合格率を発表しません。
発表すると,20歳代よりもそれ以上の年代のほうの合格率が高いことが明らかとなるのではないかと思います。
なぜそう思うかと言えば,社会人が学ぶ一般養成施設の合格率は,大学の合格率よりも高いからです。
社会人は,それまでの人生で見聞きしてきたことの知識は確実に若い人よりも多いはずです。
さて,問題に話を戻すと,大学生は介護保険の導入も後期高齢者医療制度もリアルタイムでは知りません。
そのため,こういったわかりやすいものでも間違う人がいるはずです。
2000年の介護保険と同時に始まったものには,成年後見制度などがあります。後期高齢者医療制度が始まったのは,2005年です。
4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。
国民皆年金・皆保険が実現したのは,1961(昭和36)年です。
基礎年金制度は,ずっと後の1986(昭和61)年に始まりました。
5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。
福祉三法の成立順は,旧生活保護法(1946年) → 児童福祉法(1947年) → 身体障害者福祉法(1949年) ⇒ 新生活保護法(1950年)です。
身体障害者福祉法の成立が遅くなったのは,GHQの影響です。
この当時の社会福祉制度は,GHQの指令のもとでつくられていきます。しかし,身体障害者の多くは,戦争によって生まれた傷痍軍人ですが,GHQは傷痍軍人を優先する施策は,無差別平等を示したSCAPIN775(社会救済に関する覚書)に反するものとして,傷痍軍人に対する施策を廃止させました。
そのあとに対象を広げた法制度を目指したために時間がかかっていました。
そんな折,ヘレン・ケラーさんが来日して,法制度の整備の機運が高まり,ようやく1949年に身体障害者福祉法が成立したのです。
身体障害者福祉法に規定される障害者の種類は,肢体不自由だけではなく,視覚障害,聴覚障害,言語機能障害が含まれたのは,ヘレン・ケラーさんの来日によるものです。
歴史が面白くなってきませんか。
今日の問題をみて,「あっ」と思った人もいるのではないでしょうか。
第35回国家試験では,非常によく似た問題が出題されています。
第35回・問題49 日本の社会保障の歴史に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。
2 社会保険制度のうち最も導入が遅かったのは,雇用保険制度である。
3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。
4 1986年(昭和61年)に基礎年金制度が導入され,国民皆年金が実現した。
5 2008年(平成20年)に後期高齢者医療制度が導入され,老人医療費が無料化された。
正解は,選択肢1です。
1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。
正解も第29回の問題と同じです。
この問題の中で特に注意したいのは,選択肢3です。
3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。
日本は,ドイツを参考にして社会保障制度をつくったこともあり,社会保障制度の中心は,社会保険制度となります。
この方針のために,社会保障財源の割合では,社会保険料は,税(公費)よりも多くなります。
〈今日の一言〉
国家試験に向けた勉強は,最初は知識が少ないのでとても辛く感じることでしょう。
しかし,それでも勉強していくと多くのことが分かってくるので,いろいろなことがつながっていきます。
そのようになれば,知識があいまいになることもど忘れすることも少なくなります。