社会保険と生活保護の違いに関する問題の出題頻度は,それほど高くありません。
第22回以降の国家試験では,第35回までには,第22回,第25回,第29回,第34回の4回しか出題されていません。
一般的に手にする過去3年間の過去問の範囲ではカバーしていません。
参考書などで確実に覚えておく必要があります。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題51 社会保険と公的扶助に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行い,公的扶助は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じた給付が行われる。
2 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。
3 社会保険は救貧的機能を果たし,公的扶助は防貧的機能を果たす。
4 社会保険は事前に保険料の拠出を要するのに対し,公的扶助は所得税の納付歴を要する。
5 公的扶助は社会保険よりも給付の権利性が強く,その受給にスティグマが伴わない点が長所とされる。
知識があって,しっかり考えて解けばそれほど難しい問題ではありませんが,知識不足だと確実に正解することができません。
知識がある人もしっかり考えることが必要なので,とても手ごわい問題です。
確実に正解するコツは,社会保険の場合は,年金保険など具体的な社会保険制度に当てはめて考えることです。
生活保護は,公的扶助と出題されることもありますが,その場合は,生活保護に置き換えて考えます。
生活保護は知っているけれど,公的扶助は知らない,なんてあほくさい理由でミスするのは手痛いミスです。
それでは解説です。
1 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行い,公的扶助は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じた給付が行われる。
これが正解です。
保険事故とは,事前に決めてある保険が給付される条件が発生することをいいます。
たとえば,労災保険なら,業務災害,あるいは通勤災害が保険事故に当たります。
業務災害,あるいは通勤災害が原因による傷病の場合は,医療保険よりも労災保険が優先されるので,労災保険から給付されます。
公的扶助の場合,押さえておきたいのは「困窮の原因を問わず」という部分です。「無差別平等」は原理なので,生活保護法が定める範囲において,どんな理由であっても,困窮している事実に基づいて給付されます。
困窮という言葉を使っても「困窮する恐れ」は,生活困窮者自立支援法の対象となるところに注意が必要です。
2 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。
社会保険にも公的扶助にも,それぞれ金銭給付と現物給付があります。
たとえば,健康保険の場合だと,「療養の給付」は,現物給付,傷病手当金などの所得補償は,金銭給付です。
公的扶助,日本の生活保護の扶助の種類は8つあります。
医療扶助と介護扶助は現物給付を原則とします。
それ以外は,金銭給付を原則とします。
3 社会保険は救貧的機能を果たし,公的扶助は防貧的機能を果たす。
社会保険は,保険事故が生じた場合に給付されるので,防貧的機能を果たします。
例えば,雇用保険の失業等給付は,失業して貧困にならないように給付されます。
生活保護は,困窮している事実に基づいて給付されます。
困窮の状態から救い出すことから救貧的機能と表現されます。
4 社会保険は事前に保険料の拠出を要するのに対し,公的扶助は所得税の納付歴を要する。
社会保険は,事前に社会保険を拠出することが必要です。
公的扶助は,税を納付せずとも,困窮の事実に基づいて給付されます。
なお,社会保険でも事前に保険料を納付せずとも保険給付される場合があります。
たとえば,初診日が20歳前にある傷病によって障害になった場合は,20歳になると保険料を納付せずとも,障害基礎年金が受け取れる可能性があります。
保険料を免除されている場合も給付されます。
5 公的扶助は社会保険よりも給付の権利性が強く,その受給にスティグマが伴わない点が長所とされる。
権利性が強いのは,社会保険です。
そのために,受給に対してスティグマを伴いません。
公的扶助の場合は,スティグマを伴います。
生活保護を受けているのに「たばこを吸っている」「パチンコしている」など,口の悪い人にいろいろ言われそうですね。
言われずとも,そう思われるのではないかと,周りの目が気になります。
年金を受給している場合は,そんなことはありません。