前回に引き続き,今回も社会保険と生活保護の特徴です。
前回の問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2023/02/blog-post_28.html
社会保険と生活保護の特徴に関する問題は,さまざまな内容が問われるので,過去問を押さえるだけではなく,その場で考えて答えを出さなければなりません。
そういった意味では,タクソノミー1.5型といったところでしょうか。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題67 日本の公的扶助と公的年金保険の特質に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。
2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。
3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。
4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。
5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。
受験生にとっては,辛い問題かもしれませんが,知識があれば,解くのが楽しくなるような出題です。
公的扶助は日本では生活保護制度です。
なお,この問題は,前回と異なり,社会保険ではなく,公的年金制度と出題されているので,若干解きやすくなっています。
それでは,解説です。
1 公的扶助は扶養義務者の扶養を優先するが,公的年金保険は扶養義務者の扶養を優先することなく給付される。
これが正解です。
生活保護法には,補足性の原理があります。
(補足性の原理) 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。 扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。 |
公的年金保険は,老齢基礎年金であれば,「65歳になること」という保険事故に対して給付されます。
2 公的扶助は個人単位で給付されるが,公的年金保険は世帯単位で給付される。
生活保護法には,世帯単位の原則があります。
(世帯単位の原則) 保護は,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し,これによりがたいときは,個人を単位として定めることができる。 |
公的年金保険は,個人に対して給付されます。
3 公的扶助は画一的に給付されるが,公的年金保険は所得に応じて給付される。
生活保護法には,基準及び程度の原則があります。
(基準及び程度の原則) 保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし,そのうち,その者が金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。 保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない。 |
画一的に給付されるのは,公的年金保険です。
所得に応じて給付されるのは,公的扶助です。
4 公的扶助は原則として金銭で給付されるが,公的年金保険は原則として現物により給付される。
生活保護の扶助は8種類ありますが,それぞれ金銭給付,現物給付があります。
そのうち,医療扶助と介護扶助は,原則として現物給付です。
それ以外の6つの扶助は,原則として金銭給付です。
公的年金保険は,金銭給付されます。
5 公的扶助は貧困予防のための給付であるが,公的年金保険は貧困救済のための給付である。
前回は,救貧的,防貧的と出題されていました。
公的扶助は,貧困救済のための給付(救貧的)です。
公的年金保険は,貧困予防のための給付(防貧的)です。