特定適用事業所で働くパート・アルバイト等の短時間労働者は,一定の要件を満たすことで,健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
近年,特定適用事業所の範囲が拡大しています。
平成28年10月~
被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
令和4年10月~
被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
令和6年10月~
被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所
〈短時間労働者の要件〉
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が2か月を超えて上見込まれること
・賃金の月額が88,000円以上であること
・学生でないこと
なお,特定適用事業所でなくても労使合意で特定適用事業所と同様に適応される任意特定適用事業所となることができます。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題70 日本の医療保険の適用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 国民健康保険の被保険者に扶養されている者は,被扶養者として,給付を受けることができる。
2 健康保険組合が設立された適用事業所に使用される被保険者は,当該健康保険組合に加入する。
3 「難病法」の適用を受ける者は,いずれの医療保険の適用も受けない。
4 国民健康保険は,後期高齢者医療制度の被保険者も適用となる。
5 週所定労働時間が10時間未満の短時間労働者は,健康保険の被保険者となる。
(注) 「難病法」とは,「難病の患者に対する医療等に関する法律」のことである。
制度を正しく理解していないと正解するのはかなり難しいと言えるかもしれません。
それでは解説です。
1 国民健康保険の被保険者に扶養されている者は,被扶養者として,給付を受けることができる。
国民健康保険には,被扶養者という制度はありません。
例えば,4人家族なら世帯主が4人分の保険料を納付する義務があります。
国民健康保険と異なり健康保険には被扶養者という制度があるのは,健康保険制度は労働者を守るための制度だからです。
国民健康保険は,自営業者などが加入する制度なので,本人のがんばり次第では多くの収入を得ることができます。
それに対して,労働者の報酬は事業主次第です。イギリスの歴史を思い出せば,労働者が保護されることがなかった時代の労働者は辛い生活を強いられたことが理解できるでしょう。
労働力を報酬に変える労働者にとって,働けなくなることは即貧困に陥ります。
2 健康保険組合が設立された適用事業所に使用される被保険者は,当該健康保険組合に加入する。
これが正解です。
大企業などは独自に組合を作って健康保険の運営を行うことができます。
そこに雇用されている労働者は,その健康保険組合の被保険者となります。
3 「難病法」の適用を受ける者は,いずれの医療保険の適用も受けない。
難病法は,難病者の医療保険の自己負担分を軽減するための制度です。
4 国民健康保険は,後期高齢者医療制度の被保険者も適用となる。
後期高齢者医療制度の被保険者は,後期高齢者医療制度が適用されます。
5 週所定労働時間が10時間未満の短時間労働者は,健康保険の被保険者となる。
健康保険の被保険者となることができる短時間労働者の要件は,週20時間以上です。