日本の年金制度は,社会保険制度を取ります。
しかし,その中で障害基礎年金は,社会保険制度の性格とは少し異なります。
社会保険は事前に保険料を負担することで,保険事故が発生した場合に保険給付されます。
障害基礎年金の場合は,20歳前に初診日がある傷病によって,国民年金法が定める障害等級1・2級に相当する障害状態になった場合,保険料を納付せずとも20歳になったら保険給付されます。
つまり,社会保険制度の中にありながら,社会福祉制度の性格を持っていることになります。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題52 事例を読んで,Cさんの年金の取扱いに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
先天性の視覚障害で,全盲のCさん(25歳,子どもなし)は,20歳になった翌月から1級の障害基礎年金を受給している。これまでは,仕事に就かず,年金以外にほとんど収入はなかったが,今年からU社に就職し,厚生年金に加入した。Cさんの視覚障害は,今後も回復が見込めないものとする。
1 Cさんは,障害基礎年金を受給しているので,厚生年金の保険料を免除される。
2 Cさんは,先天性の視覚障害により,障害厚生年金を受給できる。
3 Cさんは,先天性の視覚障害により,労災保険の障害補償年金を受給できる。
4 Cさんの障害基礎年金は,就職後の所得の額によっては,その全部又は一部の支給が停止される可能性がある。
5 今後,Cさんに子どもが生まれても,Cさんの障害基礎年金の額が加算される可能性はない。
障害基礎年金は,社会保険制度の中にありながら社会福祉制度の性格をもつと述べました。
社会福祉制度は,低所得者を対象とする施策です。これは,社会保障制度審議会の1962年勧告で示されています。
それでは解説です。
1 Cさんは,障害基礎年金を受給しているので,厚生年金の保険料を免除される。
障害基礎年金を受給している場合,国民年金の保険料は法定免除となります。
厚生年金の保険料は免除されません。
2 Cさんは,先天性の視覚障害により,障害厚生年金を受給できる。
先天性の視覚障害によって給付できるのは,障害基礎年金です。
障害厚生年金は,障害基礎年金と異なり,被保険者期間に初診日がなければなりません。
3 Cさんは,先天性の視覚障害により,労災保険の障害補償年金を受給できる。
労災保険の障害補償年金は,業務災害に対して給付されるものです。
4 Cさんの障害基礎年金は,就職後の所得の額によっては,その全部又は一部の支給が停止される可能性がある。
これが正解です。
20歳前の傷病によって生じた障害がある場合は,20歳になると障害基礎年金が給付されます。
ところが国民年金の被保険者は,20~60歳なので,障害基礎年金は保険料を納付せずとも給付されることになります。
ここが障害基礎年金は社会福祉制度の性格をもつところです。
社会保険制度は,所得調査を行うことなく,保険事故が生じることになり保険給付されます。
障害基礎年金は,保険料を納付せずに給付を受けることができる場合がありますが,所得が多い場合は,この選択肢にあるように,全部又は一部の支給が停止されることがあります。
極めて社会福祉制度の性格をもつことがわかります。
この規定があるのは,保険料を納付している人との不公平を調整するためです。
5 今後,Cさんに子どもが生まれても,Cさんの障害基礎年金の額が加算される可能性はない。
障害基礎年金には,子の加算があります。