社会保障費用統計には,ILO基準による社会保障給付費とOECD基準による社会支出の2つの統計がまとめられています。
社会保障給付費は,その名称のとおり,個別に給付されているものを積み上げているのに対し,社会支出はそのほかに住宅政策などが上乗せされるなど,項目が若干異なります。
しかし,基本はほとんど変わらないので,どちらが出題されても,驚くことはありません。
社会保障費用統計に関連する出題を第22回~第35回までの実績は以下のとおりです。
回 |
出題 |
22 |
〇 |
23 |
〇 |
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34 |
〇 |
35 |
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出題されなかったのは,わずか4回のみです。
年を追うごとに増大していますが,天文学的な数字だということもあり,比率はそれぞれの比率にはほとんど変化がありません。
近年の施策は,全世代対応型を目指しているので,家族に対する給付の割合は,年々増えていますが,それでも全体に占める割合は,令和元年度でも10%には至りません。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題50 「平成30年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)による2018年度(平成30年度)の社会保障給付費等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は,40%を超過している。
2 国民一人当たりの社会保障給付費は,150万円を超過している。
3 部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)の社会保障給付費の構成割合をみると,「年金」が70%を超過している。
4 機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)の社会保障給付費の構成割合をみると,「高齢」の方が「家族」よりも高い。
5 社会保障財源をみると,公費負担の内訳は国より地方自治体の方が多い。
知識がなくても正解できる可能性が高い問題となっています。
こんなところが,合格基準点が105点となった理由の一つでしょう。
それでは,解説です。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は,40%を超過している。
社会保障給付費の対国内総生産比は,約20%です。
これでも十分に高いですが,40%もありません。
2 国民一人当たりの社会保障給付費は,150万円を超過している。
国民一人当たりの社会保障給付費は,約90万円です。
3 部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)の社会保障給付費の構成割合をみると,「年金」が70%を超過している。
部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)の社会保障給付費のうち,最も割合が大きいのは年金であることは正しいですが,約50%です。
4 機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)の社会保障給付費の構成割合をみると,「高齢」の方が「家族」よりも高い。
これが正解です。
高齢は,約50%
家庭は,以前より多くなってきていますが,それでも現在のところ(2023年3月時点),10%は超えていません。ただし家族が子育て支援の政策によって10%を超える日はそれほど遠くはないでしょう。
しかし,家族を高齢が超えることは考えられません。
5 社会保障財源をみると,公費負担の内訳は国より地方自治体の方が多い。
公費負担は,都道府県よりも国のほうが多くなっています。
〈最後に一言〉
ここに示した傾向は,今後もずっと続きます。
社会保障給付費は増大し,それぞれの内訳も政策により変化しますが,それは天文学的な数字なので,毎年の傾向としては,微々たる変化に過ぎないためです。
ただし,覚える数値は具体的であればあるほど,すぐに陳腐化してしまいます。コツはできるざっくり覚えることです。
例えば,
部門別社会保障給付費の構成割合
年金:医療:福祉その他=5:3:2
といった感じです。